内容説明
近年再評価が進む国際連盟は、医療などの社会・人道的活動を通じて東アジアでも国際協調を模索した。しかしそうした活動は、日本やイギリスが築いていた帝国に基づく国際秩序と摩擦を生み、日本は満洲事変を経て連盟を脱退する。政治と切り離した活動を期待されたはずの連盟に対し、日本が反発を強めたのはなぜか。連盟を支えながら、最大の帝国であり続けたイギリスは何をめざしていたのか。各々の思惑が交錯するなか、東アジアで展開した国際主義の試みに、新たな光を当てる。
目次
国際主義と帝国
第1部 国際主義と日本の格闘(国際連盟の思惑と中国の引力;満洲事変期の連盟、イギリス、日本;日本の連盟脱退通告と天羽声明;中国にとって連盟とは)
第2部 国際主義と介入(日中戦争勃発後の連盟と中国;ビルマロードとイギリス帝国)
第3部 戦後への継承と帝国の変容(国際連盟から国際連合へ―イギリスの演じるべき役割;国際社会の要請とアヘン問題―桎梏としての帝国)
著者等紹介
後藤春美[ゴトウハルミ]
1960年東京都生まれ。東京大学卒業、同大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学、オクスフォード大学大学院近現代史研究科博士課程修了。博士(オクスフォード大学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は国際関係史、イギリス現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Naoya Sugitani
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最近中公叢書で日英関係の本が続けて出版されたが、そのうちの一冊。国際連盟の中国での活動が取り上げられている。日本は中国と戦争状態になる中で、国際連盟が守ろうとした大英帝国秩序そのものが解体に向かう過程が描かれている。著者は国際連盟と国際連合の連続性を強調している。中国が連盟をどう見ていたかという視点やビルマロード(援蒋ルート)開拓過程での伝染病予防や麻薬対策に連盟が関与していたというのも興味深かった。国際連盟研究の新たな一ページがこの本によって生み出されたといえるだろう。2017/11/13