内容説明
不妊治療で婚家から孤立する女が出会ったのは自らの生い立ちと算数障害に悩む男。私たちは不良品じゃない。愛を忘れた女と愛を知らない男の逃避行がはじまる。
著者等紹介
遠田潤子[トオダジュンコ]
1966年大阪府生まれ。関西大学文学部卒。2009年、第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『月桃夜』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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utinopoti27
147
流産を繰り返し、夫と義母から執拗に責められ続ける千穂と、不気味なオーラを纏う寡黙な男との出会いが全ての始まりだった。一方で、かつて妻を殺した女の息子を探し続ける老人。この二つのシナリオが絡み合い、やがて一つの線に繋がる時、罪深き人間たちの業が浮かび上がる。自由を求めて繰り返す逃避行の果てに、二人は安息の地に辿り着くことができたのか・・。誰もが裡に抱える負の感情を、濃縮してぶちまけたが如き、圧倒的な後味の悪さに辟易とするが、わかっていても抗えず、目を逸らせない。遠田作品の磁力はまさに悪魔的だ。2020/03/06
takaC
144
蓮との関連性はイマイチよくわからなかったが結構壮絶な話だった。そしてあれもこれも現実にあり得そうな事ばかりというのが空恐ろしい。今夜はきっと気分良く眠れない。2018/04/25
いつでも母さん
143
なんともな・・やはりの遠田ワールド。感想が書きにくいったらありゃしない。賢治と亡き妻がここまで麗に拘っていたことに違和感がある。だからその娘・恵梨の感情が解らなくはない。恵梨も千穂も自分の存在感を求められる価値とのギャップで苦しかったのだろう。しかし哀しいのは麗・・かける言葉を私は持ってないという情けなさだ。千穂の姑や夫は言語道断。何故この人と結婚したかなぁ。夫・真一のような男はしつこくて怖い。愛されることは、認めることはこんなに苦しいのか!蓮の花だけが全てを呑みこんで咲くのか・・それも畏れる眺めだ。2016/04/05
じいじ
124
疲労困憊で読了。とにかく全編を通して重い空気が漂う物語だった。結婚13年、10年も不妊治療に苦しむ妻が切なくて歯痒かった。そして、傲慢で利己的で固まった亭主とその母(姑)には憎悪が限りなく膨らんでいった。それでも先が気になって読み止められず一気読み。文体は読みやすい作家だ。「因果はめぐる」―妻がとった行動は、法的云々はさておき心情的には当然の成り行きなのだろう。自分では手に取らなかった本、お薦めいただいた読友さんには感謝いたします。機会を見つけて、もう1・2冊読んでみたい。2017/03/25
miww
105
10年の不妊治療を強要し全てにおいて自分に服従させる夫と、子供を産めない嫁を蔑む姑。千穂は無口で掴みどころのないディスカリキュリア(算数障害)の透と出会い逃避行の道を選ぶ。透は麗なのか‥。千穂と透、そして麗を諦めきれない老人、その家族の物語。跡取りを望まれる重圧、DV、虐め、嫉妬。負の感情が入り混じり新たな憎しみを生む。今作もひたすら重いが後半は読む手が止まらない。善意、偽善、正義。受け取る側の物差しは人それぞれだと思い知る。2017/09/25
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