内容説明
冷戦下の世界を震撼させた英国史上最も悪名高い二重スパイ。そのソ連亡命までの30年に及ぶ離れ業を、M16同僚との血まみれの友情を軸に描き出す。
目次
見習いスパイ
セクションV
オットーと坊や
ブー、ブー、ベイビー、俺はスパイだ
三人の青年スパイ
ドイツからの亡命者
ソヴィエトからの亡命者
期待の星
荒れる海
ホメロスの冒険物語
桃
追いはぎ貴族
第三の男
ベイルートの男
居ついた狐
前途きわめて有望な将校
君だろうと思っていたよ
ティータイム
蒸発
三人の老いたスパイ
著者等紹介
マッキンタイアー,ベン[マッキンタイアー,ベン] [Macintyre,Ben]
イギリスの新聞タイムズのコラムニスト、副主筆。長年、同紙の海外特派員としてニューヨーク、パリ、ワシントンに駐在。これまでに9冊の著書があり、そのうち『ナチが愛した二重スパイ』(高儀進訳、白水社、2009年)は、コスタ伝記賞(2007年度)とギャラクシー英国書籍賞伝記部門賞(2008年度)にノミネートされ、『ナチを欺いた死体英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』(小林朋則訳、中央公論新社、2011年)はベストセラー第1位となった
小林朋則[コバヤシトモノリ]
翻訳家。筑波大学人文学類卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
84
上流階級の出のキム・フィルビーは英国対外情報部MI6の有能な対ソ連セクション長だったが、大学時代からのソ連シンパで、30年以上二重スパイだった。発覚後は亡命した。彼の生涯を、彼の友人たちとの関係を中心に描くノンフィクション。人物数が大量なのでやや読みにくいが、第二次大戦中から冷戦半ばまで、情報を送り続けた彼はいかにして発覚したのかが興味深かった。そりゃ直接的な証拠などありゃしない。しかし英国人は変な人が多く、それを誇りに思っているのだろうかとも。良書。おすすめ。2020/10/22
Panzer Leader
24
面白く読めた「第2次世界大戦諜報物三部作」の作者が「英国史上最も悪名高い二重スパイ」キム・フィルビーを描く傑作ノンフィクション。数々のスパイ小説のモデルとなったフィルビーの評伝は正に事実は小説より奇なりを地で行く。祖国だけでなく親友・知人・妻をも裏切り続けた彼は本当に後悔無く生涯を終えられたのだろうか。2016/04/25
yooou
12
☆☆☆☆☆ かくも綿密なる取材に基づく大変な労作でありました。面白い!!お見事でした。 2015/06/30
アトレーユ
11
とても薄ら怖かった! が、後半に記述があった通り、二重生活という欺瞞とスリル(しかも文字通り「命懸けの」スリル)の依存症だったのだろう。自身のイデオロギーと真反対である組織(や仲間)の中にいても、決して自身の信条がぶれずにいたのはすごい。フィルビーがモデルでもある「ティンカーテイラー〜」を再読しよう。2024/03/06
DEE
11
これは共産主義、そしてソ連という国に人生を捧げたスパイ、キム・フィルビーの物語であり、イギリスとソ連、MI5、MI6、KGB、ナチス、そしてアメリカをも巻き込んだ諜報戦の歴史の物語でもある。フィルビーは自分の20年来の親友に嘘をつき続け、妻たちにも本当の顔は見せずスパイという職を全うしていく。犠牲も多く、彼のせいで何人もの工作員が帰らぬ人となるけど、それは彼にとっては必要な犠牲。しかもこの話はまだ謎も多く、現在も解決には至っていないという。でもこの先も真相が明らかにされることはないだろうな。2022/06/04