内容説明
小さな映画館“月舟シネマ”と、十字路に建つ“つむじ風食堂”を舞台に、「笑う犬」を目指すジャンゴと、彼を取り巻く人々による、雨と希望の物語。月舟町シリーズ三部作・完結編。
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年東京生まれ。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による著作と装幀の仕事も行なっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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kanegon69@凍結中
216
月舟町シリーズの登場人物が沢山出てくる中、あくまで犬の視点で語られるのが面白い。犬だって本当は笑いたいそうだ。我々の会話も理解しているが返事を伝える手段がなく、いつも違うように誤解されているって。なるほどぁ、ほんとうにそんな気がしてきますね。終盤まで登場人物がそれぞれの困窮する立場に対して次第に危機感を募らせていくのですが、エンディングがこれまたなんとも心地よい。現状を素直に受け入れた時に自分の在り方について明かりが見えてくるのかもしれないですね。そう、レインコートを受け入れたこの犬のように。癒されました2020/05/24
❁かな❁
197
月舟町3部作・完結篇*『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり〜』どちらもお気に入り♪久しぶりに月舟町の皆に会いたくなり今作を読むことに。今回は月舟シネマの看板犬のジャンゴの視点で語られていく。このジャンゴがとっても賢くて可愛い♡読み始めるとすぐに月舟町の住人になれてしまう!懐かしい穏やかで優しい気持ちでいっぱいになり癒される♡言葉にできないほど美味しいクロケット定食を食べてみたいし「三ミリの脱出」観てみたい♫心に響く言葉もあった*「生きれば生きるほど、それまで見えなかったものが見えてくる。→2018/01/19
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
110
【月舟町三部作】の最終章。ささやかな商店街の一角にある名画座付きの犬(いろんな名前を持っている)の視点で普通の人々の生活が描かれる。淡々とユーモラスに、時にシニカルに、概ねとても暖かく。作中の台詞で「六日間働き続けてやっと休もうとしたなんて、神様はずいぶんタフだったんだな」に共感。振り返ると早いけど、一週間働くのって大変。いつも通りの日常も、どこかが毎日変わってる。愛する映画館が閉鎖されてしまうという悲しい出来事が起きることもある。それでも日常は続く。次の『日曜日』を待ちわびながら。だから明日も頑張ろう。2015/11/27
吉田あや
109
大好きな町の皆に陽気な笑顔を見せたいと願う健気な犬のジャンゴ。月舟シネマの看板犬である彼には、先代のオーナーに突如として捨てられた哀しい過去がある。けれどその現実に必要以上の感傷も重みもつけず、今ある幸せと大切な人の笑顔を想うところに心救われる思いがする。犬であるところの自分は笑顔でもって気持ちを届けることができないと嘆きながらも、筋肉痛になる程に尻尾を振り、喜びを伝えてくれる。月舟町完結編に相応しく、ジャンゴの偏ることなく真っ直ぐな視点は遠い日の春のように晴れやかで心和らぐ。(⇒)2020/03/20
nico🐬波待ち中
107
月舟町シリーズ三部作の完結編。今回は〈月舟シネマ〉の看板犬ジャンゴ目線の物語。前2作のメンバーが緩やかに繋がりとても楽しい一冊となった。なぜ犬は笑顔になれないのか、と気をもむジャンゴ。みんなと一緒にいれて嬉しい、と伝えたいのに巧く伝わらない。確かに陽気な表情は出せないけれど、周りのみんなを笑顔にする力は持っている。それってとても素敵なこと。そして読んでいる私も微笑み和んでいる。この物語の優しい魔法に私もかかってしまったみたい。またいつか、このメンバーと再会できますように。ほのぼのと優しい気持ちなれた。2020/10/23