内容説明
人間の芸術は自然の再現であるとはいえ、単なる自然の模倣ではない。人間は、自然の造形が持つ均衡や調和、リズムや運動という自然の造形を形象化しながら、本質を抽出しようとする。自然の動と静、あらゆる形から本質を取りだし、抽象化するのである。ところが現代芸術は、抽象を推し進めるあまり、自然から離反してしまった。二一世紀の芸術はどこに向かうのだろうか。
目次
プロローグ 幼児画からの出発
1 芸術は祝祭から―芸術の起源
2 芸術は生命の表現―芸術の真実
3 芸術制作の現場から―創作者の立場
4 参加する芸術―鑑賞者の視点
5 現代芸術の行方―何が失われたのか
エピローグ 造形の根源を求めて
著者等紹介
小林道憲[コバヤシミチノリ]
元福井大学教授。1944(昭和19)年、福井県生まれ。72年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。哲学、文明論専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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邪馬台国
10
幼児期の殴り書きから始まり、現代美術まで芸術と創作の歴史を冒険するような一冊。自然から乖離した現代美術への批判はどん詰まりを感じていただけに食い入るように読んでしまいました。能の引用が多いのですが、丁度世阿弥について読み終えたばかりなので自分はありがたかったです。多少ジャンルは横断しつつもかなりオーソドックスな内容。にも関わらず発見が多かったのは、制作する人間に向け、時流に流されない創作の本質について繰り返し語っていたからかも知れません。少なくとも自分は救われました。2017/01/28
R
1
師匠の本。 芸術が自然や神への信仰を基礎に発展し,現代ではそれらから離れてしまった。従来の芸術のありかたを否定する「反芸術」とでもいうべき考え方が台頭してきた。今後はどのように動いていくのだろう。2015/08/06
ふたも
1
著者は哲学系の方。いろんな視点から論じていて興味深い。芸術学を志す人が読んでみると勉強になると思います。2015/05/13
bocboc
0
途中からは批判的に、でも丁寧に読んだ。芸術とは宇宙や自然の営みの一部であり、そうであるがゆえに宇宙や自然の本質を抽出しようとする試みと不可分であるという筆者の考えは一つの芸術観として大切だと思うけれど、自分は芸術とはもっと広く自由なものだと考える。宇宙の本質を内包していなくとも、自然を対象化していなくとも、それは立派な芸術だ。本書では批判的に例示されるピカソもポロックもウォーホルも、たしかに彼らの芸術を生きたのであり、それは本人にしかわからない。その意味で、芸術とはむしろ極めて私的な営みなのではないか。2018/08/21
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