内容説明
母は私を許してくれたのだろうか?夫の誠一郎、盲導犬の茶々とアメリカで暮らす鈴子。岡山にある実家「望月青果店」には、もう5年戻っていない。ふいに訪れた停電の夜―故郷に置いてきた記憶がよみがえる。捨ててきたはずの故郷と母、交わされた約束。みずみずしくて甘酸っぱい、家族の物語。『レンアイケッコン』以来、3年ぶりの書き下ろし長編。
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
岡山県生まれ。同志社大学法学部卒業。1993年「おとぎ話」(河出文庫『玉手箱』に収録)で第12回「海燕」新人文学賞、2005年『欲しいのは、あなただけ』で第12回島清恋愛文学賞、09年原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん』でボローニャ国際児童図書賞を受賞。NY州ウッドストック在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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れみ
118
アメリカの片田舎で雪の降るなか、主人公の鈴子が故郷の岡山での出来事や夫の誠一郎と出会って結婚するまでのことを、想いがすれ違い続けた母との関係とともに振り返るお話。家族だから言われたら腹の立つこととか許せないことって絶対あるなあと考えさせられる。中学生時代の想い人である隆史が出てくるエピソードが好き。あと、お父さんもわりと好き。2015/02/15
モルク
101
アメリカで盲目のピアニストの夫、盲導犬と暮らす鈴子のもとに郷里の母の体調がすぐれないとの父からの電話が入り里帰りすることにする。長年に渡る母との確執、鈴子はとにかく母から離れたかった。きつい言葉を投げ掛ける母、それに応戦する鈴子。帰国直前の大雪、停電騒ぎに帰りたくないという気持ちが大きくなる。懐かしさを勝る苦い感情。出来ることなら中止に…た思う気持ち。わかる。でもお互い言いたいことを言える関係っていいよね。私は最後まで感情を押さえつけていたからある意味鈴子が羨ましい。2023/02/25
taiko
100
豪雪の中、帰省を控えた鈴子の思い出話。またまた母と娘の話。強烈な母、あまりいい思い出がなく、反発して家を飛び出していた鈴子。でも、やっぱり親と言うのは、いくつになっても特別なもの、それがところどころに表れていて、切なくなりました。現在の鈴子のがちゃがちゃうるさい感じが目について、そこはちょっと嫌だったかも。誠一郎さんがなんとも心が広く、彼だから上手くいくのねと思いました。その年になり、ようやく歩み寄れた感のある鈴子とお母さん。良かったねと、ホッとしながら本を閉じました。2016/01/23
美登利
99
分かる、わかるなぁとしみじみ。私も母親との関係がこじれてるし、夢見がちなところはあるし、年齢的にも鈴子とほぼ同じだから。岡山弁が耳に残って読み終えてもなかなか去ってくれない。これが他の地方の言葉だったら全く違う印象になってしまうと思うくらい良かった。果物の瑞々しさとは裏腹にトゲトゲしていて女性の嫌な部分が過剰に表現されているので、非常に好き嫌いが分かれる物語だと思う。その分、男性がおおらかで理想的なので釣り合いが取れているのかもしれない。私は好きなタイプの話だった。2018/11/30
ゆみねこ
80
岡山の山間部で「望月青果店」を営む実家。55歳の鈴子はアメリカで全盲の夫・誠一郎と盲導犬の茶々と暮らす。大雪で停電した夜に故郷に置いてきた記憶がよみがえる。母と娘、簡単そうで難しいその関係。誠一郎さんの優しさが救いでした。2018/12/05