内容説明
23年前に2人を殺し、無期判決を受けた男・久保島が仮釈放され、深津さくらの勤める金沢の更生保護施設に入寮してきた。凶悪事件を起こしたとは思えぬ誠実な更生ぶりに、次第に心ひかれていくさくら。市内で殺人事件が発生し、寮生に疑いの目が向けられた。さくらは真相をつきとめるべく奔走する。
著者等紹介
大門剛明[ダイモンタケアキ]
1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。第29回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をW受賞した『雪冤』で2009年デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
113
40代サラリーマンが刺殺されるところから始まる序章。刑期を終え出所した人の社会復帰や更生をする金沢の施設で補導員をするさくらが主人公。その施設は軽微な犯罪の者が多かった中、二人殺害し無期懲役だった久保島が仮釈放で入寮してくる。温厚で真面目なその人柄に次第にさくらはひかれていく。更生とは何か。更生は未完成、更生は永遠に終わらないという言葉が響く。赦しとは…いろいろ考えさせられた。たださくらが好きにはなれず、そこが残念。お気に入りの大門さん、これからも追いかけます。2021/10/12
紅はこべ
103
デビュー作の『雪冤』以来。『雪冤』は内容はともかく文章がゴツゴツしていて読み難かったが、本作ではだいぶこなれてきた。すごい真面目で、色気やエンタメ性は稀薄だけど。贖罪とか更正とかがこの人の作家としてのメインテーマなのかな。更正すべきなのは、監視されていたのは本当は誰だったのか、その点はミステリらしいどんでん返し。真の悪人が咎められず生き残る。牧野社長に真実は知らされたのだろうか。2019/11/10
nyanco
73
本書のテーマは『更生」舞台となる「更生保護施設」、実は私の家の近くにもあります。建設の際には近隣住民の反対があったし私も小さな子供や娘がいたら心配すると思います。しかし、こういった施設の実情や必要性が綴られ、周知されることはとても意味のあることだったと感じます。その点はとても良く書けていました。23年間久保島が模範囚で仮出所を目指していた理由を知ると『刑務所の意味』はあったのだろうか…と感じ虚しかった。刑事の梶、さくらの心情も見事に描かれ、これはとても良かった。続→2010/11/03
takaC
70
結局のところ石川県警のチョンボが発端だよな。自己中心的な人ばかりだったけど、それが現実社会だと?2013/09/15
Rin
57
【図書館】読友さんのレビューより。更生とは?何を基準に更生したのか、そうではないのかを判断するのか。服役後に社会に戻ってきたとしても、反省する前に自分の生活の場を得なければ、理解してくれる人がいなければ罪について本当の意味で考えることはできないのではないのか。難しい問題がたくさん詰まっている本。社会に受け入れられずに、犯罪者という目で最初から否定され続ければ、心はどんどん荒んでいく。個人的に主人公のさくらに共感できない部分はあったけれど、テーマは深くて考えさせれる本でした。読めてよかったです。2016/07/03