出版社内容情報
人からロバ、牛、豚、犬、猿そして人へーー動物と人の心を重ねもって六度の転生を描く。現代中国最大の作家の真骨頂
内容説明
人からロバ、牛、豚、犬、猿そして人へ動物と人の心を重ねもって六度の転生。人の身で生きる世界が夢?途方もない物語が始まる。
著者等紹介
莫言[モオイエン]
1955年、山東省高密県に農民の子として生まれる。幼くして文革に遭い、小学校を中退。兄の教科書や旧小説で文学に目覚める。76年に人民解放軍に入隊。85年に『透明な赤蕪』でデビュー。翌86年、『赤い高梁』(張芸謀監督により映画化。88年、ベルリン映画祭グランプリ)で、倫理を超える農民の生命力を描いて、中国のマルケスと呼ばれる。以後、多作な作家として文壇の最先端を行き、現代中国でもっともノーベル賞にちかい存在といわれる
吉田富夫[ヨシダトミオ]
1935年、広島県生まれ。63年、京都大学大学院修了。現在佛教大学文学部教授、中国現代文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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そり
12
200ページまで読んだ。『百年の孤独』を彷彿させる壮大な作品。著者は、重さを軽快に辛さを楽しく描こう、とされたらしい。けれど、重さは重いままでそこを幻想味で混沌とさせた、『赤い高粱』に痺れる程のパワーを受けてファンになった身としては、相性が良くなかったようだ。エンタメとしては『白檀の刑』に匹敵するのかも疑問。ただ、マジックリアリズム的表現はさすがのものでした。2014/05/22
タカギ
11
中国のノーベル賞作家。伊坂幸太郎先生がファンらしい。読み始めは、簡易な言葉遣いの一人称ですぐ読めそうだと思ったけど、改行が少ないので結構なボリューム。海外文学だけど、さすがに欧米のそれよりは人物の名前が覚えやすい。中国が建国された頃の、銃殺された地主が次々転生する話。糞のイメージしか残っていない。中国の人って、糞に強いのかなー。今でもトイレは恐ろしく汚いというし。特に誰にも感情移入せずに読み終わった。2016/05/10
三柴ゆよし
10
時代の趨勢により天地がひっくり返り、銃殺刑に処された地主の主人公・西門鬧(シーメンナオ)が経巡る転生(上巻ではロバ⇒牛⇒豚)の物語。白髪三千丈のストーリー展開で読者を眩惑するのは莫言の十八番。本書では、革命期から現代にまでいたる中国農村部の人たちの生き生きとした感情の爆発が、相変わらずの長広舌で語られると同時に、様ざまに意匠を凝らした「語り」の魔力が読者をつかまえて離さない。上巻を読み終えた段階では、『白檀の刑』と甲乙つけがたいおもしろさ。下巻も読む。2012/01/28
荒野の狼
7
中国のノーベル賞作家である莫言の長編。中国の民衆側の歴史知るうえで、莫言の作品は貴重で、時代的には「赤いコーリャン」が抗日戦争前後、「豊乳肥臀」は抗日戦争と引き続く中国の内線の話が中心(毛沢東と鄧小平の時代はそれぞれ短い1章が割かれている)であるが、本作は中華人民共和国成立直後の1950年から現代(2006年出版)までの話。中でも、毛沢東の政権下で失敗に終わり多くの犠牲者がでた大躍進政策と文化革命の話が多く、鄧小平からの改革・開放政策の時代はやや駆け足。2021/09/10
hutaketa
6
「人からロバ、牛、豚、犬、猿そして人へ動物と人の心を重ねもって六度の転生」を果たした西門鬧とその一族の物語。トリッキーな語りの構造(西門鬧の魂を持つ藍千歳が牛であった頃の己について語るなど)も面白かったが、物語のぶっ飛び具合はそれ以上!例えば人間としての心が獣の本能(しばしば性欲)に負ける場面は爆笑もの。でもそれで終わらないのが莫言。そこには「自分というものは様々な魂がせめぎあっている存在であり、世界もまたそのような存在である」というメッセージが秘められている……ような気がした。2011/03/22