出版社内容情報
水野忠邦の策略により突如下った不条理な三方国替えの命に、羽州荘内領民が一致団結し、大挙して江戸に上り幕閣に強訴するが!?
内容説明
突然の国替えの上意を阻止すべく立ち上がる領民たち。武士の世の矛盾を見事に突く義民たちの群像劇。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2年(1927)、山形県鶴岡市に生まれる。24年山形師範学校卒。中学教師を勤めたのち、31年上京し、ジャーナリストとして活躍する。46年『溟い海』でオール読物新人賞を受賞したのち、本格的作家活動に入る。48年『暗殺の年輪』で直木賞、61年『白き瓶』で吉川英治文学賞、平成元年、菊池寛賞、2年『市塵』で芸術選奨文部大臣賞、6年朝日賞・東京都文化賞を受賞する。平成9年(1997)1月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄人28号
7
☆ 荘内藩、川越藩、長岡藩三藩の三方国替えの幕府の方針に対して、領主を慕っていた荘内藩の領民が、これを阻止しようとして一致団結して行動する。時代は大御所時代から水野忠邦の天保の改革期にかけての時代。当時の時代背景や忠邦をはじめとする幕閣や庄内藩の家臣の思惑がよく描かれている。いろんな人物が出てきたり、当時の文書の書き下しが多く掲載されていたりして、読んでいてやや疲れる。2016/09/21
Tanaka9999
6
2006年発行中央公論新社の単行本。あとがき有。歴史小説のひとつだが、核となる主人公がいないためどうしても散漫な印象となってしまう。にしても、江戸時代を通じて同一領主だった大藩については領民と領主との間に親しみのようなものがあったようで、幕末の志士の中には下級武士だけではなく被支配層出身者もいるようだ。比較的領主が変わった土地の話というのは(小説であっても)あまり聞かない。領主が変わるというのは少なくとも現代の市長が変わる以上のものがあるだろうが、どんな感じだったのだろうか。2020/12/06
よるる
3
天保十一年、江戸後期に実際に起きた天保義民事件。財政破綻の川越藩が裕福な荘内藩への転封を画策、あからさまな転封を目隠しする為に老中水野忠邦が長岡藩を加え、三方領地替えが言い渡される。比較的善政を行い領民との関係の良かった荘内藩では、領地替えに反対する農民が命をかけ幕府に訴え出る。ただ殿様を慕うゆえの美談ではなく、農民がその後の自分達の暮らしを見据え理路整然と訴えを起こしていた事実。良い意味で実にしたたかで逞しい。終盤、吉報を伝える早駕籠に喜ぶ民衆が群がり、大群衆が鶴ケ岡城に向かうシーンは是非映像で見たい!2013/05/28
須那 雄太郎
0
津山市立図書館2015/06/18
むさし
0
打算的な動きをするにも、長年培った土壌があってこそ、いざ行動が起こせると感じた。そして、事が成った後の元通りの藩主と領民への関係へ戻る手際は唸らざるをえない2018/02/18