内容説明
これまで、『春秋』は孔子みずからの手になるものか、孔子の死後ほどなくして弟子たちが編纂したものと考えられ、『公羊伝』や『左伝』などは、その『春秋』を後に解説したものとされてきた。しかし、古代史書の年代矛盾を系統的に解消した著者の作業から、まったく別の事実が浮かび上がってきた。『春秋』『左伝』などは、斉や韓など、それぞれ異なる国で短かい間に次々と作り出されたのであり、戦国各国が競ってこうした史書を生み出した背景には、正統主張というメンツと意地の張り合いがあった。他国の王を誹謗し、みずからが天下を握るにふさわしいと主張する―『春秋』『公羊伝』と『左伝』を読みくらべながら、それぞれの史書にこめられた真実の対峙を詳細に読み解く。
目次
第1章 『春秋』と『公羊伝』の「形」(史書出現の背景;『春秋』と『公羊伝』の編纂;田氏の正統と褒貶の「形」;殷の故地の継承)
第2章 『左伝』の出現(『左伝』の末尾と「某の某年」;『左伝』冒頭から韓氏の祖へ、そして鄭の子産へ;子産、天下を語り韓宣子と殷の故地におよぶ;「君子」・「夫子」・「吾子」と韓宣子 ほか)
著者等紹介
平勢隆郎[ヒラセタカオ]
1954年(昭和29年)茨城県に生まれる。81年、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。博士(文学)。鳥取大学助手・専任講師・助教授、九州大学助教授、東京大学助教授(東洋文化研究所)を経て、現在、同大学教授(大学院情報学環・東洋文化研究所)。現在の研究テーマ:東アジアの中の中国古代史認識
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