内容説明
許されぬ恋は雨にうち震え、閉じこめられた遙かな思いにライラックは香る。旧き邸によぎる遠い人の面影。革命と動乱はやむことなく、骨肉のあらそいと生死のあわいに京劇の調べはたゆたう。時をこえてひそやかに息づくおさなき日の想い。十四の愛と十四の宿命は、酔うもやるせなく、醒めるもまたやるせない…清朝貴族の斜陽を描く自伝的小説。魯迅文学賞受賞。
著者等紹介
葉広〓[イエグワンチン]
1948年10月、北京市生まれ。清朝有数の貴族エホナラ(葉赫那拉)氏の末裔で、西太后は大伯母にあたる。北京女子一中を経て、文革中は68年より陝西農村に下放し農場で働く。74年から西安で看護婦、ついで新聞記者を経験。90年、日本の千葉大学に留学。帰国後、西安市文連に所属して創作に専念。創作のかたわら、テレビドラマも手がけるなど、第一線で活躍中の女性作家。『貴門胤裔』で、魯迅文学賞受賞
吉田富夫[ヨシダトミオ]
1935年、広島県生まれ。58年、京都大学文学部卒業。現在、仏教大学文学部教授。現代中国文学専攻
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
2
舜銘もまた一門の者として、これらの苦難を経験してきた「当事者」であるのだが、自身に対する描写は少ない。むしろ家族達に起こった様々な出来事を「傍観者」として捉えた内容の方が多い。それが、ただ没落した身を嘆く貴族の感傷的な話に終始しなかった要因だろう。京劇の台詞がごく普通に会話の中に登場し、由緒ある骨董物が家の中には無造作に転がっている。『采桑子』の一節からタイトルが取られている本作は、全九章から成り、それぞれが独立した短編としても読める。兄や姉、祖母が各章の主人公となるが、別の章では脇役として再登場する。2006/10/21
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