内容説明
風景は気分である―十九世紀スイスの孤独な思索者アミエルは、その『日記』のなかにこう書いている。気分は私たちの内面にうかぶ特殊に自由な風光だ。自然と人文の共同作業によって生まれた景観に人が出会うとき、気分と景観との相互的な働きかけのうちに風景は現われてくる。江戸後期の詩人たちは、このような風景のうちに遊び、その悦楽をことばに表現する名手ぞろいであった。彼らは風景をどのように観照したか。この本は、その作品の解読を通して、また現地の巡見を手がかりに、彼らの風景享受の作法と表現のありようを、文化史的、社会史的に解明した日本の風景の精神史である。
目次
第1章 詩人石雲嶺の生活と意見
第2章 藤枝詩壇における江戸シノワズリ
第3章 月瀬幻影―江戸シノワズリの風景発見
第4章 月瀬真景―景観制作者の風景感受
第5章 山水癖と殺風景―江戸シノワズリの風景原論
第6章 江戸シノワズリの風景作法
第7章 麦緑菜黄の景観と風景の自娯
第8章 浪漫無頼の子たち―江戸シノワズリの社会史
第9章 百姓衰微、田地荒廃―景観と風景の社会史
第10章 新しい知識人たちの風景―十九世紀三〇年代小考
第11章 生産の景観と風景
著者等紹介
大室幹雄[オオムロミキオ]
1937年、東京に生まれる。早稲田大学、東京大学に学ぶ。歴史人類学専攻。千葉大学教授
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