出版社内容情報
初めての世界戦争が拡大し泥沼化して禍根を残したのはなぜだったのか。戦争の推移、そのとき司令官たちのとった態度を、軍事史家が検証分析する。地図・写真多数、索引・資料集付。
内容説明
膠着する戦線、疲弊していく国家。泥沼の欧州大戦は終局へと向かう。勝敗を分けたのは作戦力か、技術力か、それとも…。大戦の転換点に、戦略史家ハートの冷徹な分析が冴える。
目次
第7章 緊張―1917年(偏った攻勢―アラス(1914年4月)
攻囲戦の傑作―メッシーネ
パーサンダーラへの“道”―「第三次イープル戦」
カンブレーにおける戦車奇襲
カポレット
パノラマ―空の戦い)
第8章 急展開―1918年(最初の突破;フランダース突破;マルヌへの突撃;「第二次マルヌ戦」―1918年7月;ドイツ陸軍“暗黒の日”―1918年8月8日;メキド―トルコ軍の壊滅;夢の戦闘―サン・ミエル;悪夢の戦闘―ムーズ=アルゴンヌ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
71
下巻はおまけが多く本文は5/3程度。三国協商側の反撃によって戦況が逆転したというより、ドイツ側が攻勢に出て、これがかえって自らを苦しくした様相が詳細に語られる。攻め落とした街でワインで酩酊していたとは!著者の主張は成功する作戦は奇襲であることと、兵士を無駄に殺す作戦に対する厳しい批判(例えばフォッシュ)だが、もちろん後付けの面は強い。しかし後者に関して物量というものを利用して次の大戦を戦ったのが、この大戦の終盤に参戦したアメリカで、学ばなかったのがこの大戦で漁夫の利を得た日本というのは歴史の皮肉だろう。2024/03/31
富士さん
4
再読。基本はひとつひとつの戦況を中心に戦争の推移をたどったものですが、反総力戦のイデオローグ、熱心な孫子ファンらしい著者の思想が一貫して現れる歴史著述でした。その根底には、なぜ自分たちの世代は死ななければならなかったのか?という問題意識と、それをもたらしたものとしての近代的な秩序を基礎とした盲目的な集団主義や官僚主義を嫌悪する自由主義者としての価値観が流れているのを感じます。一見無味乾燥な内容に惑わされますが、よく読むとその内実はかなり熱い想いが語られており、名著と呼ぶにふさわしいものだと思いました。2018/03/02