内容説明
ニッポニア・ニッポン―日本を象徴する名を持つ、哀しいまでに美しい鳥・トキ。かつて日本全土に生息し、昭和初期に至っても佐渡には約100羽が生息していたが、今や最後の1羽が飼育されるのみとなった。戦後の混乱期、トキ保護に立ち上がった人々は、手さぐりの生態観察、困難な餌の確保、進展しない保護活動等々、苦闘の日々を辿らねばならなかった。トキを慈しみ、トキと響きあって生きた男たちの足跡を佐渡に追い、「人間」と「自然」の相剋・共生を問う。
目次
朱鷺色の楽園
愛へのこだわり
生椿の夜
脚光のなかの受難
生命に集う
世界一の裏切り者
最後の糞
谷平の夕焼け
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
90
第30回(1999年)大宅壮一ノンフィクション賞。 トキを愛し、トキを守ろうとした男たちの物である。佐渡を舞台に絶滅の危機に瀕している トキの保護に立ち上がる人々の奮闘が 活写される。 環境破壊、環境保全の名の下、政府は どう取り組んだのか? 日本と中国の協力関係が微笑ましい。 巻末のトキ略年表の数字が全てを物語る、 日本産トキ保護への奮闘記だった。2023/04/15
Sakie
24
純国産系統朱鷺の絶滅の記録。日本ではありふれた鳥だったはずの朱鷺は、昭和25年には40羽を切っていた。絶滅に向かわせた原因は、水田の化学肥料・農薬使用による障害と餌(春夏秋は水田の昆虫、ドジョウ、貝類、冬は渓流のサワガニ)の減少、減反に伴う耕作放棄、土地の乱開発が主で、いったん数が減れば捕食者、猟師による罠、豪雪すらも大打撃になるとわかる。この絶滅の流れで重要な点としては、ある臨界点を超えると絶滅を止めることができない点と、環境庁が主導権を握ってからでは、一羽として殖やしも孵しもできなかった点である。2020/12/06
小谷野敦
5
戦後のトキ保護の記録を、佐藤春雄という高校教員を中心に描いている。大宅壮一ノンフィクション賞としては地味な題材で、それまで類書がなかったのかと驚いた。昭和はともかく、平成という分かりにくい元号記述をするので、西暦に直しておいてほしいなと思ったが、「あとがき」に「天皇陛下」とあるので、ああそういう人なのか、と思った。2023/05/23
くれの
3
多くの人の思いとともに朱鷺は逝ってしまったのかとやるせなさと無力感に襲われました。絶滅寸前になってその責任の所在を問う風潮は今も変わっていないのかもしれません。健全な自然があることの大切さを噛み締めました。2016/08/20
OMO
2
面白さ:○ 興味:○ 読みやすさ:○ 新鮮さ:○ 文学的云々:×2023/12/08