内容説明
彼らは北極点を目ざした…百年以上昔の北極航海日誌を自ら再現しようとした一人の男の狂気が、氷と闇の「物語」の果てに消滅してゆく―。現代ドイツ文学の鬼才ランスマイアーの『ラスト・ワールド』に先行する傑作。待望の本邦初訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
11
語り手の「私」は100年を経て繰り返された2度の北極探検行を物語る。訳者あとがきにて「この物語の真の主人公である北極」と書かれているが、まさにその通り。100年前の北極探検は史実に基づいており、彼らが遺した日記が度々登場しては、過酷な日常を描写する。それに対して2度めの北極行はフィクションなのだが、あまりピンとこない。史実の探検があまりにリアルなせいか、フィクションの部分の緊張感が足りない。ノンフィクションとフィクションの融合という意味では面白いのだけど、その間のギャップが埋まっていないように感じられた。2016/11/22
スターライト
7
オーストリア=ハンガリー帝国北極探検隊による1872年5月から1874年8月にかけて行われた極地での探検行を、約100年後にイタリアの青年が同じ航路で跡付けていく様子を作者ランスマイアーが語る、という三重構造を持った作品。しかし、多くのページはパイヤーとヴァイプレヒト二人の隊長率いる探検隊の苦闘に割かれている。想像を絶する低温と食糧の欠乏、どこまでも続く氷山と氷の世界、栄養と体力の消耗、低温下での環境による病魔と多くの困難には思わず目を覆いたくなる。帰還したパイヤーへの周囲の態度はあまりにも理不尽だ。2019/01/10
勝浩1958
7
生還できたことが奇跡のように思えました。北極海上において航行可能な開水路が至る所に広がっているだろうと楽観視していたのですから。新航路発見や学術的調査を目的としていながら、この時代にあっては冒険の域を出なかったようです。2016/04/23
zuumisu@gmail.com
0
北極探検隊の実話。生きて帰れ!!当時の権力者達は新大陸新航路発見に躍起になるが、探検者達が命を懸けて発見した大地は辿り着くのも困難で何の国益にもならない氷と闇の大地だったとさ。私は毎晩自分のベットで眠れる幸せを大発見でした。2013/11/19