内容説明
ひとつ、またひとつ、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい。言語が消滅してゆく世界で、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家…ついに書かれた究極の実験的長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
81
昨日9月24日は、筒井康隆さんの誕生日だった。何か読もうと本棚を見ていて、この本が目に止まった。買った時には、128ページのところで袋とじになっていた。ここで読む気が無くなった人には返金すると書かれている。ここまで読んで返した人はいたのだろうか。文字がどんどん消えていき、その文字を含むものもどんどん消えていく虚構世界。執筆当時、キーボードの消えた文字の上に逆さにした画鋲を貼り、血塗れになりながら書いたという噂もあった。そこまではなかったろうが、筒井さんの創作の苦しみが滲み出てきて、今読んでも圧倒される。2021/09/25
いちろく
58
紹介していただいた本。物語を描く事は、世界を創る事。一語ずつ言葉が消えていく世界が描かれる物語。個人的には、中盤から終盤前の該当する単語が増々使えなくなる中で、文章として表現されていく過程が特に興味深かった。明らかに計算された物語だけれどあざとさはそれ程感じず、楽しめた。単行本版は途中から袋とじ。絶妙な箇所での区切りは、狙っていますよね?2018/02/16
背古巣
39
んーーーー!感想が難しいです。っていうか、日本語の音がだんだんなくなっていくという制限の中で、どれだけのことが出来るか(書けるか)の実験をしてみたというところですか?音の制限がきつくなっていく状況でよくこれだけのことが書けるなとは思いますが、申し訳ないですがそれだけの感想です。音が少なくなっていくと、表現が抽象的になってくるので、後の方はよくわかりませんでした。m(__)m2018/03/10
夏
27
まさに実験的小説。世界から一つずつ言葉が無くなっていったら、この世界はどうなってしまうのか。まずは「あ」が、そして次は「ぱ」が無くなっていく。あらすじから、なんとなく小川洋子さんの『密やかな結晶』のような物語を想像していたのだが、似ているようでやはり違った。『密やかな結晶』が多分に物語性を含んでいたのに対して、この小説は実験的な側面が強い。「あ」からランダムに言葉が無くなっていくのだから、当然といえば当然か。実験的な部分は評価に値するが、小説としては楽しめなかった。お薦めしてくれた方に、申し訳ない気持ち。2023/03/26
yukalalami
23
徐々に言葉が消えていきその文字を含むものの存在も無くなっていく。小説家が書く虚構と現実が入り交じる世界で実験的小説だがその手腕に驚く。まさかの袋とじ方式!文字縛りが相当な数になってからのエロ描写の生き生き感がスバラシイ。後半になるにつれ書きたい欲が増している感じ。ラストは読んでのお楽しみ。2016/04/08