内容説明
イタリア・ファシズムはいかに生成し、権力に到達するのか。単なる政治的反動や軍事独裁とは異なる、大衆運動の過激な一翼が成長発展したファシズムの本質的特徴を明らかにする年代記。
目次
1 光り輝く5月から傷つけられた勝利へ
2 パリのイタリア人
3 危機の群像・1919年
4 アドリア海の嵐
5 総選挙・1919年
6 工場共和国の夢
7 ダヌンツィオ王国の滅亡
8 赤い2年の終焉
9 農村ファシズムの爆発
10 総選挙・1921年
11 ドゥーチェの来歴
12 人民突撃隊の挫折
13 岐路に立つファシズム
14 全国ファシスト党の誕生
15 自由主義の黄昏
16 ドン・ストゥルツォの拒否
17 ファシズム対民主主義
18 二重権力へ
19 法秩序を守るゼネスト
20 ダヌンツィオの墜落
21 秋雨のナポリ
22 ローマ進軍
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
5
第一次大戦へのイタリア参戦から、ムッソリーニの政権掌握へと至る経緯を600ページ強でものした大著。しかし、文体はとても読みやすく、当時のイタリアの複雑怪奇な情勢を交通整理するように書いている。大戦参戦に端を発するイタリア社会の分裂が、戦争の犠牲とそれに見合わない戦後処理の代償(連合国内の発言力の低さに起因する)によって、益々先鋭化。教条主義的な左翼と、党利党略に走り過ぎる保守との間で果てしない混迷が続き、皆が「秩序をもたらしてくれる新しい勢力」としてファシストを待望するようになっていく様がよくわかる2016/04/16
ゆたか
3
第一次世界大戦への参戦・中立をめぐる争点が登場したことで、イタリアの政党政治では左右双方内において亀裂が生じた。終戦後もこの亀裂は解消されず、連立政権の選択肢は徐々に狭まっていく。結果、政府は次第に拡張するファシズムの暴力を抑えられなくなる。というのが、大きな流れ。本文650ページに亘ってその過程を詳細に論じている。大著ではあるものの、語り口は平易で読みやすい。あとがきで、「これは論じたいことの前半にすぎない」と述べているが、後半は完成しなかった。残念な限り。2013/05/15
コラッジョ
1
ムッソリーニのローマ進軍について詳しく書かれた好著。 如何に第一次大戦後のイタリアがグダグダで、ムッソリーニに取って代わられても仕方が無い国であるか、これでもかと実例が挙げられている。 訳者は当然の如くファシズム反対の方のようだが、ムッソリーニは決して私欲や権力欲でローマ進軍を引き起こしたのではない事がよく解る。
叛逆のくりぃむ
0
「デルクイ」誌上で三浦小太郎氏が推薦していたのと外山恒一氏の転向を引き起こした作品という理由で興味を抱いた。読み進めていくうちには、現在日本の停滞と似通った描写が見られた。2011/11/05
かるてぶらんしぇ
0
日本におけるファシズムの不可能性。外山恒一が不謹慎系Youtuber集団『つばさの党に入党すべき理由』 https://youtu.be/47FDPXktgOU?si=CbJdZP6OdlJ3XUbA2024/05/23