感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
12
随筆集。日常生活や、鎌倉や旅行先など土地について綴られている。彼女の美的センスは素晴らしく、特に銀閣寺訪問記などは外側から見る風景だけではなく、内側から見えてくる様子、その歴史的位置づけ、建立の意味など多層的な視座からの解釈によりイコンとしての銀閣ではなく、実在的な銀閣を表現している。やや趣きが変わるのが「幽愁記」と題されたがん闘病記。これが絶筆となるかのごとく克明に誰と会い、何をしたのか記されている。正岡子規の『仰臥漫録』のように、人間死期を目の前にすると何か残したいという思いが強まるのだろうか。2017/05/15