出版社内容情報
日露戦争勝利から韓国併合と、日本が存在感を強める中、明治天皇は崩御する。初めて書かれた比類なき指導者の本格評伝、ここに完結。降る雪や明治は遠くなりにけり――だからこそ私には書く必要があった。交通手段未発達の時代にも、全国への
難儀な巡幸をいとわなかった明治天皇の姿勢は、今日に至る歴代の天皇にもつながっている。肉声を伝える史料の乏しい中から材料を拾い出し、著者はその人物像を可能な限り浮き彫りにした。誰も挑まなかった比類なき指導者の評伝を、いま書いておかなければ歴史の彼方に遠ざかってしまうから。
ドナルド・キーン[ドナルド キーン]
角地 幸男[カクチ ユキオ]
内容説明
明治天皇は、交通手段未発達の時代にも、全国への難儀な巡幸をいとわなかった。例えば、汗の吹き出る暑い輿の中に、正座を崩さず丸一日乗り続けることも…。その後の天皇にもつながるこうした姿を、天皇の肉声を伝える史料の乏しい中から拾い出し、著者はその人物像を可能な限り浮き彫りにした。この巻では、天皇が43歳から59歳で崩御するまでの、激動やまぬ時代を取り上げた。
目次
閔妃暗殺
英照皇太后の死、内政の悩み
初の政党内閣の短命
皇太子成婚、義和団事件
皇孫裕仁誕生、日英同盟
ロシアの東方進出と撤兵合意破り
戦争回避努力の挫折
日露戦争の国際政治
シオドア・ルーズヴェルトの調停による講和
追い詰められた韓国皇帝の抵抗
生みの母の死
伊藤博文、安重根に撃たる
韓国を併合する
「大逆」の陰謀
崩御
大喪、乃木殉死
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ブルーツ・リー
4
文学者にとって、歴史的に著名な人物の伝記を書く事は、一世一代の大仕事。大作家にのみ許された仕事であって、ドナルドキーン先生ならば、当然いずれかの人物の伝記を書くだけの資格を当然有している作家ではあるのだが、まさか、その「いずれかの人物」が明治天皇という事になると、流石に驚く。 しかし、ドナルドキーン先生の筆ともなると、全く気負うことなく、この大伝記を仕上げてくる。やはり文学者として、傑出した人物なのだ。 平易な文章で、明治天皇の足跡を、余すことなく伝えている。一代の仕事に、見事に成功している。2020/11/03