内容説明
孤独と愛と死と芸術を凝視しつづけた福永作品の全貌。水郷のあるロマネスクな町を背景に、悲劇的で古風な美しさをたたえた姉と、快活でよく笑う妹に、同時に愛された青年の孤独な生を捉えた「廃市」、生は暗く死もまた暗いと父に訴える少女の声を描く「告別」、他、全小説9編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
昭和っ子
14
一話目の「死後」の、イメージを惹起される文章に引き込まれる。代表作の一つとされる「告別」を読み、巧みな構成に魅了される。飛び飛びに読んで行って「退屈な少年」のジブリっぽいのどかな始まりが、不穏に急転直下する所に、油断がならないなーとビックリする。「風花」の、病と困窮のさなかで、すべてを失いつつあるのを分かっていながら病院のベッドに寝ているしかない男の心に蘇る、過去の一瞬一瞬の鮮やかさと諦念、それらを託して歌われる短歌を通して、日本人として「歌をよむ」という事の面白さを伝えられた所で、読了。2014/04/04