出版社内容情報
見習医と施療一筋に生きる医長“赤髯”の心の交流と成長を描く、医療小説の最高峰『赤ひげ診療譚』。下町人情物の『おたふく物語』。
たとえ、それが徒労だとしても――。「脚注」で、さらに深まる物語の味わい。心ならずも養生所の見習医となった保本登は、“赤髯”と呼ばれる医長の強引さに反発し療養施設での医療に戸惑う。しかし、一見乱暴な言動の裏に秘められた赤髯の信念を知りしだいに真実を見る眼を開かれていく……。黒澤明監督による映画化でも知られる医療小説の最高峰! 下町人情が胸に沁みる『おたふく物語』を併録。
内容説明
幕府の御目見医になるために長崎遊学から戻った保本登は、小石川養生所の医長“赤髯”こと新出去定に呼び出され、見習医としての勤務を命じられる。強引な赤髯に反発し、療養施設での医療に戸惑う登だったが、一見乱暴な言動の裏に秘められた赤髯の信念を知り、貧しい人々と触れ合ううちに、しだいに真実を見る眼を開かれていく…。黒澤明監督による映画化でも知られる、医療小説の最高峰。底抜けに明るく、どこまでも善良なおしずを描く『おたふく物語』を併録。“脚注”で、さらに深まる物語の味わい。付録・主要登場人物一覧、地図。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ここぽぽ
17
「赤ひげ診療譚」と「おたふく物語」という二つのお話。どの話の話も人間の心の光と影、曖昧なところを言葉にする力がすごいと思った。微妙に表現しにくい人間の関係を文章に落とし込んでいて、読み応えがあり、真理を突いてると思った。 貧乏と無知は愚かなのか?知らないことで苦しんでいることを、どうにかして良い方向に導くことはいつの時代も普遍的だと思う。赤ひげ先生の生き方は人間として大きくて、話でも読めてよかったです。2025/06/28
ノシメとんぼ
5
途中までしか読めていなかったので初めて完読。結末を書ききらずともその先を自分で想像できる小説は何冊もあるけれど、この小説のどの話も、書ききらずとも自分で想像しなくて良いという風に感じるような、ある種さっぱりした読後感だった。時代小説にしてはかなり読みやすくて、慣れてない自分としても楽しく読み終わることができた。2020/05/20
マウンテンゴリラ
5
二編とも、それを表現する言葉が出てこないほどの感動を覚えるとは正にこの事か、と思えるほどのさすがの名作であった。山本周五郎の作品はこれまでも素晴らしい感動を与えてくれたが、話の粗筋さえ忘れてしまったものもある。そんな私にとって打って付けのシリーズがこの長編小説集であった。全二十六巻の読破が出来るかどうかはわからないが、それに取り組む価値は十分にあると感じた。気のせいかもしれないが、近頃、著者の作品が、多くの人に読み直されているのではないかとも感じる。→(2)2016/06/03
たつや
4
贅沢な二本立てでした。赤ひげに翻弄されながら成長していく保本が力強く描かれつつ、貧困層に優しい赤ひげ。おたふく物語の人間味溢れる描写は実に山本周五郎らしさが、表現されていて、お煎餅と日本茶を飲みながら!スイスイ読了した。
ひより
4
ちと怖いが熱心な赤ひげ先生と、その養生所に入れられ、イヤイヤ勤めていた登。 登がある時からきちんとするのがほほえましい。 「おたふく物語」は、苦労を重ねてきた姉妹が、それを感じさせない明るさをふりまいていて、彼女らに幸あれと願うばかり。 ★32023/02/07
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- 和書
- とろける部屋 徳間文庫