出版社内容情報
あらゆる者が無傷ではいられない――。田沼意次父子を経済改革に取組んだ先駆者と捉え直した歴史長篇。感動がさらに深まる脚注付き。
あらゆる者が無傷ではいられない――。脚注で、さらに楽しむ歴史物語。非難と悪罵のなか、政治・経済改革を貫き通す老中田沼意次の苦闘。偽悪家を装いながらも、意次に引きつけられる旗本青山信二郎と、善良さゆえに運命に翻弄され転落してゆく、信二郎の親友・藤代保之助……。人間らしく生きようとする人々の苦悩を描き、経済小説の先駆として、従来の歴史観を覆した名作!
内容説明
江戸時代中期、老中田沼意次は金権政治家の汚名にまみれていた。田沼批判の戯文を書いて出頭を命じられた旗本の青山信二郎は、意次と対面し、その清廉な人柄に引きつけられる。しかし、失脚をもくろむ反田沼派の魔手はいたるところにのびていた。やがて、最愛の息子、意知が城中で斬りつけられ、意次は絶望の淵へと追いつめられてゆく―。田沼意次曰く、「たとえゆき着くところが身の破滅だとしても、そのときが来るまではこの仕事を続けてゆく、いかなるものも、おれをこの仕事から離すことはできない」田沼意次父子を進取の政治・経済改革者として大胆に捉え直し、従来の歴史観を覆した名作!経済小説の先駆でもある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mike
79
田沼意次は試験勉強で田沼の政治という言葉だけ覚えたレベルだが、 どうも随分評判が悪い政治家らしい。物語の中では世間の批判の最中にあり定信によってその地位が陥落する直前の苦しい姿が描かれている。本人は質素な生活を好み財政難から救うべく先を見越した新しい策を試みようとする真面目な政治家である。だが、話の中心は旗本の男の友情や情愛の縺れである。全体的に衰退物語じゃんと思ってたら最後に周五郎さん「時代の下に埋められ消え去った人の姿を書いたので題名はその反対のものの逆説として受け取ってほしい」との事で何とか納得。2024/12/08
たつや
50
何の知識もない私は、「全集の6巻ね」という程度で手に取ったけど、史実にもとずくないように驚くけど、江戸に近かった山本周五郎が書く人物の台詞は生き生きとしていて、テレビや映画以上にリアリティーがある。テンポも良く読みやすい。評判の悪い意次という歴史上の人物がいたことが学べたことが今さらですが収穫です。2017/06/19
ジュール
7
耐えに耐え、施策を粘り強く進めて行く田沼意次。一方、旗本崩れの戯作者、信二郎、その親友の保之助、身を盗賊に落とす千吉、奔放なその子、遊女のふくと市井の人々が生き様も惹き込まれる。特に斜に構えながら実は真摯に生きる信二郎、保之助とふくの逃避行の場面等素晴らしい。 敢えて言えば意次の盛衰をもう少し前面に出せば。 巨匠に対しおこがましいが。2023/11/06
お華
5
★★★★☆最近は、田沼さんは実は優れた人だったという話をよく見かけ、読みたかった一冊。2014/03/02
訪問者
4
老中田沼意次の晩年の姿を描くが、真の主人公は青山信二郎とその子、そして河井保之助と藤扇、その4人の物語である。2017/06/07