出版社内容情報
読める、わかる――21世紀の小林秀雄。
明恵上人や宮本武蔵の言葉に、また絵画や音楽など美の経験に、生き方の秘訣を探る「私の人生観」。他に「島木君の思い出」「中原中也の思い出」、座談「鉄斎を語る」等。昭和24年~25年の21篇。
内容説明
昭和24年47歳、明恵上人や宮本武蔵の言葉に、絵や彫刻など美の経験に、人生の秘訣を探る「私の人生観」―。さらに、富岡鉄斎を語る、中原中也の思い出をたどる…。
目次
昭和二十四年(一九四九)(座談/鉄斎を語る(三好達治;富岡益太郎;小林秀雄)
鉄斎2
島木君の思い出
死体写真或は死体について ほか)
昭和二十五年(一九五〇)(秋;酔漢;「きけわだつみのこえ」;蘇我馬子の墓 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Takahashi
13
初の小林秀雄作品として読み始めたが、これは難しい…。タイトルにある人生観に関してはまず、「観」とは何かを宗教や美術的見地から考察しているが自分には不得手の分野で読み込めなかった。ただ本文では批評家自身の目から当時の批評について疑問を呈したり、本当に平和を実現したいなら、平和のために動くのではなく、動いた結果に平和思想が芽生えるようにせよの他、「文化」に関して日本人の考え方に疑ったり独自の批評眼が出ていた。こればぜひとも再読でリベンジを果たしたい。2015/09/13
壱萬弐仟縁
4
「文化について」(初出1949年)。「カルチュア、栽培という言葉が自ら語っている事で、西洋人には、わかり切った事なのであるが、文化文化とウワ言を言っている日本人には気が付かないことがあります。それは、文化とは、単なる観念ではないという事だ、寧ろそれは物である、人間の精神の努力を印した『物』とという事です」(87ページ)。cultivateと接頭辞が同様なので、語源は生産の意味も強いという気もする文化であるが、文化消費に傾斜しがちな消費文化というしくみを、史的に再考する必要を感じる。文化の生産面に注目。2012/10/02
masanari
3
小林の本の中でも難しいと言われて、かつよく引用される「私の人生観」。身構えて読んだが面白かった。人生観の観とはただ外側から見るという意味ではなく、内側からも観ることであるという話から始まり、小林の方法が仏教や武道、美学にも通ずるものであることを述べる。対談も多く載っているが、こちらは聞き手のヨイショぶり、小林のやる気のなさなどであまり面白くない。2021/05/01
MatsumotoShuji
1
040314
0
再読。江藤淳の解説が面白い。江藤は、小林の「社会化された私」の実践を戦後に於ける「モーツァルト」から見ている。恐らく、この伝記が書かれた前後に母の死という契機が、小林を理論だけでなく実践の方向に向かわせたと。『成熟と喪失』の作者である江藤なら言いだしそうなことだがw確かにこの辺りから母親と「死んだ子供」の話が出てくる。実際には、小林の場合は息子と「死んだ母親」だが。2023/08/20