内容説明
世の中、正邪・善悪だけではやっていけない。―激動の院政期、貴賤上下・老若男女・盗賊・怪異、聖人・俗人…。入り乱れて、王朝社会の裏面を生きたしたたかな群像。
目次
世間話に無類のおもしろさ
『今昔物語集』とその時代(成立と作者;説話の形成と挫折;院政期文化の縮図;享受史)
『今昔物語集』の世界(悪と苦と愛と―俗界の凝視;仏をもとめて―聖界への反転)
『宇治拾遺物語』の世界(生成と表現;『宇治大納言物語』の影;猿楽と狂惑;昔話・絵巻との関連)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
19
時代小説家と中世説話専門の研究者(国文学文)がコラボした本書。タイトル2編に纏わる藤沢氏のエッセイ“世間話に無類のおもしろさ”と小峯先生による数多くの絵図、絵巻物などの史料からの写真版をふんだんにあしらっての夫々の時代背景、共通点と相違点等の詳細な解説。非常に興味深く読むことができた。実は、夫々の本文を読むべく、内容をきちんと確かめず図書館WEB予約で借りた。アルバム集と気付き、読まずに返却しようかとも思ったが、頁数の少ないこともあり取敢えず読むことにした。それが意に反して愉しく読めた。次は本文を。2013/10/27
maekoo
6
熊楠や芥川も研究した院政期に創られ南北朝まで付け加えられていったのではないかと言われている「今昔物語」は、世俗篇が有名だが大部分が仏教思想と教義に裏打ちされた仏教史・教えを主に扱った書で、説話が重複する宇治拾遺物語の内容も含め、伴大納言絵詞や信貴山縁起絵巻・鳥獣人物戯画にその仏教思想が顕著で人間とは何かを読者に問いかけていて面白!。 実際この本でも写真や絵図を沢山紹介している。 その同時代に編纂されたであろう田楽・猿楽的笑い(ユーモア)が溢れた宇治拾遺物語自体も宇治大納言物語との絡み等三作どれも謎だらけ!2024/12/14
シロクマぽよんぽ
5
「羅生門」・「鼻」などの芥川作品や、高校の教材で有名な説話文学の2作品。近世に入るまで『今昔物語集』が埋もれていたのは知らなかった。貧民や盗人、女性、霊が文学作品に取り上げられる点に特徴がある、という指摘は面白かった。《貴族社会・仏教的世界観・現世⇔異界・鬼・天狗・貧民・盗人》と考えると、読みごたえがありそうだ。2025/04/09
brink
1
絵巻物などからの写真図版がたくさんで眺めて楽しい本。時代背景などの説明がメインで、物語のストーリー自体はほとんど記述ないので、ちくま文庫の今昔物語集と合わせ読みです。2009/09/08