内容説明
ハートで読み、古典に遊ぶ。恋のかけひき、オシャレな会話、季節の移りかわり。互いに認めながらも対抗意識をもやす2人の才女が生き生きと描きだす平安貴族の華やかな後宮の生活。
目次
2人の宮廷女性
『枕草子』の世界(作品の方法・作者の目;作品構成の方法;成立と諸本;作者・清少納言;中関白家と作者;日記回想章段;類聚章段;随想章段;作品の本性)
『紫式部日記』の世界(作品の特質;作品の成立・構成・内容;紫式部の生涯;晴儀のなかの目と心;宮仕えの精神と態度)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
47
古典に嗜むために作品の舞台や美術資料を参照しながら読み進むとずっと愉しさが深まる。山川出版社の日本史図録も詳細で受験資料として秀逸だが、断片的で系統立てられていないため深く理解するには中途半端である。 本書は絵巻物や舞台を画像を多用し、目で読むではない構成となっている。 このように国語と社会へ「横串し」を刺したような教材を学校でも取り上げれば古典や歴史アレルギーは少なくなるのではないか。「見せ方が大切。」 このシリーズの古事記・日本書紀、万葉集版も読んでみたい。2021/11/23
青緑 空
8
千年前の書物の原本の存在など期待できるわけもなく、興味があった人たちが書写したものだけが頼りとなる。しかし一字一句厳密に書き写されたとされる書写もないらしい。この時代、後世のために残すと言う意味で書写する意識などこれっぽっちもなかったんだろう。作中人物の官位が事実と異なっていたり、章段の構成すら異なる書写もあるとのこと。『作者の実際に書いた本がどんなものであるかは、実は知るよしもない』と書かれている。しかし、ないが故に本当の原本に想いをはせる楽しみもある。私は清少納言ファン・ビギナーになれるだろうか?2022/12/24
安国寺@灯れ松明の火
3
妻が図書館から借りていたのを失敬しました。枕草子と紫式部日記を通して清少納言と紫式部を語る、非常にわかりやすい評論です。当時の女流作家のほとんどが、地方官を歴任する中流貴族の出身という点が印象的でした。中流ゆえに堅苦しさもあまりなく、文学的な素養を育む経済的な余裕もある反面、中央と地方を行き来するという浮き沈みがついてまわる家庭環境が背景にあるのはわかりやすい説明でしたが、そうした共通の背景があってもなお、このライバル同士の人となりがはっきりと違ってくるのがまた面白いです。2010/02/14