内容説明
死んだ有機物から生きている無機物へ。夢見る永遠の不在証明。〈安部工房〉全探険。写真で実証する作家の劇的な生涯。
目次
評伝 安部公房―故郷喪失
生きている無機物
他者への通路
悪夢としての都市
エッセイ 「国際化」のパラドックス
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
341
安部公房には高校生の頃から関心を持ち続けていたのだが、今回このアルバムを見て、あらためて作家そのものへの関心を呼び覚まされた次第。つまり、これまで安倍の私生活にはほとんど関心を払ってこなかったのである。それはひとえに作品の持つ強いインパクトの故であったのかもしれない。例えば、今回初めて知ったことは、安部公房の自筆原稿がきわめて整っていて読みやすいこと。また、彼が無類のカーマニアであったことなど。もっとも考えてみれば、機械への偏愛は随所に見られたのだから、いわばそれも当然であったのだろう。2024/09/22
味読太郎
6
「記録するように記憶する」のが難しいならば、「記憶するように記録する」のもまた難しであろう。私はこの記憶と記録というものが相反する所にあって性質を異にする事から消し合う言葉だと考えていたが、どうやら勘違いらしい。すぐれた直感、直観によって収められた瞬間には両者が共存し、互いが発火作用となり、生理に訴える「物」が映る。またその明度、密度を調べるよう、変えては実験する。安部公房自身の写真とともに、彼の作品のビジュアル、そして見ているものの写真が彼の文章を思い起こさせ、それらは世界でありながら、素材であった。2016/05/03
きつね
5
「ぼくの考えでは、都市が悪夢のイメージしか結びえない理由は、要するにぼくらが、まだ都市をじゅうぶんに表現しつくす、都市の言葉をもっていないせいだと思う。ぼくらの血の中には、古い共同体の言葉が、すぐにも沸騰しかねない圧力をひめて、まだ息づいている。都市を語るときにも、ついその共同体的思考を借用してしまうことになる。すでに無力になった共同体の言葉で、共同体の対立物である都市を語ろうとするのだから、そのイメージが悪夢めいてくるのも、しごく当然のことなのだ」(p.96「都市について」より)2013/05/29
:*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)
3
三島と同世代なのかぁ。作品の印象から、ずっとこっち(現在)よりの人かと思っていた。昔の文豪の印象を大きく変えた生き方とはうんぬん。作品は好き。この本は…思想的なことがなんだか小難しかったが、写真が多いので眺めておしまい。若干ヒッピーの香りがした、画家の奥様も。子供の名前も新しい。好き勝手言うとるな、ワシ。2025/04/29
Nepenthes
3
「箱男」を読み非常に面白かったので手に取った。生い立ちや環境から自己の存在を不確定で抽象的なものだと捉えていたのだろうか、アバンギャルド・シュルレアリスムを志向し書き上げられた作品群。そして小説だけでなく戯曲や舞台、そしてその音楽まで作っていたというその旺盛な創作意欲と情熱に惹きつけられる。知らない事がまだまだ沢山あるので作品や研究本を読み漁りたい。2024/12/05
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- 和書
- ノモンハン秘史[完全版]