出版社内容情報
なぜヒトの世界にだけ「いじめ」「ひきこもり」が成立するのか? 人類史500万年から考える。
内容説明
「逃げ場のない社会」の正体は?「排除」の起源から、ポストコロナの未来まで『ケータイを持ったサル』著者による画期的論考!
目次
第1章 遊動から定住へ―共同体の誕生
第2章 共有から占有へ―いじめの誕生
第3章 オーナーから家畜へ―ヴァルクの誕生
第4章 異人から職人へ―バンディットの誕生
第5章 漂泊から隠棲へ―ひきこもりの誕生
最終章 定型から多様性へ―社交不安障害の誕生
著者等紹介
正高信男[マサタカノブオ]
1954(昭和29)年大阪府生まれ。霊長類学・発達心理学者、評論家。大阪大学人間科学部行動学専攻卒、同大学院人間科学研究科博士課程修了。京都大学霊長類研究所教授を2020年に退職。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
28
西行、親鸞、芭蕉、良寛、長明、兼好ら、漂泊・隠棲を愛でるのは日本人の感性に合う文化風土。彼らをコミュニュケーション不得手な「ひきもり」人・文化として評価し、昨今のコロナ禍の日本と対応して論ずる刺激あふれる一冊。考えてみれば3年間のコロナ禍で私もすっかり「ひきこもり」しかも、メーターを通じた読書生活でストレスは僅かで、ある意味納得。2023/04/08
ようはん
24
農耕等の理由による人類の集団での定住化は集団内に馴染めない異分子の排除を生み出し、それがいじめやひきこもりの源流になる。昔の時代は山に籠もってくらす事や流浪の身になる等の選択肢や逃げ場もあり得たが、今の時代はそうした受け皿がないのがいじめや引きこもり等の社会問題の難しさを感じる。2020/11/28
早瀬なつ
6
教育現場にいる身としては、なるほどと納得できる部分が多くあった。反面、サルの例を見ても動物界を見ても、いじめや引きこもりといった現象は、そもそも生命がこういう形を結果として取ってしまった時点でどうしようもない、と言われているようで少し苦しかった。発達障害云々の話もそう。理論でわかっても、現実はそう簡単に思うようにならない。世界を見る上でのひとつの参照軸に過ぎない【自分の視点】は、一体どれだけ複合的な要因によって形作られているのか。なんだか途方もない気持ちになってしまった。最近の読書は心を疲弊させる……😭2025/09/23
菊田和弘
4
人類は2種いた。山・異界と里・町が。その二つは「置き配」を通じて沈黙交易を重ねていた。「ひきこもり」は今に始まったことではなかった。過去には知的な漂流でもありえた。逃げ場が自室しかない不幸の原因は、狭い価値観の無理強いにある。コロナ禍の今こそ価値の多様化の実現が必要で、その裏付けとなる本。2020/12/31
あやりん
3
今まで引きこもり問題を解決するためには、いかに自分に価値があるかを認識させ、社会の中に溶け込めるようにするかに注力してきたように思える。しかし、そうではない活路がコロナ禍により見いだせる可能性があるのは、一考に値する視点だと思った。ただ、ひきこもりの対人恐怖症をCBDにより緩和させるとしても、そこからひきこもった人々の有意性をどのように見出していけるのかについては書かれてなかった。そこについてはこれから我々が考えていかなくてはいけないのかもしれないけども。2021/01/14




