内容説明
日本は憲法で戦争を放棄した世界唯一の国だ―。日本人の多くは漠然とそう信じているが、これは戦後の憲法学者たちが日本国憲法を捻じ曲げて解釈した「虚構」に過ぎない。憲法が制定された文脈と、国際法の常識に照らし合わせた時、本当は「国際主義的」な日本国憲法の真の姿が明らかとなる。東大法学部を頂点とする「ガラパゴス憲法学」の病理を、平和構築を専門とする国際政治学者が徹底解剖する。
目次
第1部 憲法をガラパゴス主義から解放する(本当の憲法9条1項「戦争」放棄;本当の憲法9条2項「戦力」不保持;本当の憲法9条2項「交戦権」否認;本当の憲法前文一大「原理」;本当の憲法前文「平和を愛する諸国民」;本当の憲法前文「法則」;本当の「集団的自衛権」;本当の「砂川判決」;本当の「芦田修正」)
第2部 ガラパゴス主義の起源と現状(宮沢俊義教授の謎の「八月革命」;長谷部恭男教授の謎の「立憲主義」;石川健治教授の謎の「クーデター」;木村草太教授の謎の「軍事権」)
著者等紹介
篠田英朗[シノダヒデアキ]
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。ロンドン大学(LSE)Ph.D.(国際関係学)。『平和構築と法の支配』(大佛次郎論壇賞)、『「国家主権」という思想』(サントリー学芸賞)、『集団的自衛権の思想史』(読売・吉野作造賞)ほか著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てつのすけ
50
本書は、国際政治学者が、国際法の視点から日本国憲法第9条に関連し、個別的自衛権と集団的自衛権の解釈について述べたものである。なぜ、個別的自衛権と集団的自衛権をわけて考えるのか、少しは理解できた。憲法学者の主張だけではなく、国際法学者等の主張も学ばなければならないと感じた。2020/08/26
おさむ
38
国際政治学者が、日本の憲法学会を斬る。9条の解釈を巡る通説にこだわる「ガラパゴス憲法学」と批判。9条は不戦条約や国連憲章の平和主義をなぞったもので、決して日本特有の素晴らしいものなどではないと喝破する。個別的自衛権は合憲である半面、集団的自衛権は認められているが9条によって使えない。私はこう漠然と理解していたので、こうして学説のおかしさを指摘されるとなるほどなと感じる所もある。ただ、学者の実名を挙げてあげつらう文体が些か感情的過ぎて、大人気なく、あまり共感はできませんでした。2019/11/15
Francis
20
「ほんとうの憲法」に続く国際法学者篠田英朗さんの新著。主に日本国憲法9条の解釈論を展開し、従来の自衛隊違憲論、絶対平和主義的な9条の解釈論を徹底批判している。篠田さんの議論はそんな突飛なものでもなく、大西洋憲章からポツダム宣言、国連憲章に至る歴史過程を経れば彼のような解釈になるのは至極当然で中米の親米非武装国家コスタリカの憲法条項も似たような理屈のもとに制定されていると思われる。問題があるとすれば篠田さんがトランプなど右派的な政治家に親近感を抱きすぎていることで中道左派にももっと支持を広げるべきだと思う。2019/07/26
軍縮地球市民shinshin
17
著者は国際政治学者。著者によれば日本国憲法は戦争放棄を表明した国連憲章などの国際法に大きな影響の下で成立しており、その解釈も国際法に拠るものが正しいと指摘する。著者の本は初めて読んだが、なかなかに激しく説得力がある。こういう本を読むと日本の憲法学者は19世紀ドイツ国法学を輸入した時からまったく進歩していなかったのだなと思った。ただ著者は保守派ではない。しかし著者は一連の安保関連の本で憲法学者のほとんどを敵に回した。長谷部恭男、木村草太がいかにヘンテコな理屈をこねくり回しているか、よくわかった。2019/10/21
南チョ
10
日本国憲法を国際法の文脈で読みとくことを試みた著作。一般的な憲法学者の解釈より、著者の解釈が概ね正しいような気がする。本書の文章は読みづらく、論理構造も複雑で、よく分からない部分もあった。著者と憲法学者で公開討論をしてほしいな。2023/03/04