内容説明
戦後作家を輩出した伝説的同人誌「こをろ」とその時代、阿川弘之はじめ若き文士の卵たちとの交友にはじまり、広津和郎、坪田譲治、川端康成ら文豪たちとのざっくばらんな付き合い、白洲次郎、森茉莉、安部公房、亀井勝一郎、遠藤周作、有吉佐和子、そして宇野千代まで、昭和史を彩った文士たちの素顔、肉声、そして秘話―九十四歳女性作家がつづる貴重な証言録。
目次
第1章 同人誌「こをろ」とその時代(辰野隆の極上のオーバー;矢山哲治の文学めきき ほか)
第2章 文士たちの横顔―戦時下にて(円地文子はただの奥さん;宇野さんは存在そのものがいい ほか)
第3章 文士たちの横顔―戦中から戦後へ(月刊誌の編集者に;瓢箪から駒の処女出版 ほか)
第4章 戦後作家の人間模様(下北沢の文化人たち;森茉莉の純な心 ほか)
第5章 女流・宇野千代、男女のこと(中村天風の講演会;山口県人は嫌い ほか)
著者等紹介
松原一枝[マツバラカズエ]
1916(大正5)年、山口県生まれ。大連で少女時代を過ごし、同人誌「こをろ」で文筆活動を開始して以来七十余年。『お前よ美しくあれと声がする』で田村俊子賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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calaf
15
この著者、名前さえ知らなかったのですが、有名な方だったのかな? (大汗) あ、過去形で書いてしまいましたが、この本が出て4ヶ月足らず後に亡くなったようです。半生記というか生涯記という感じになるのかも。。。2013/09/16
佐島楓
9
遠藤周作、志賀直哉など著名な作家の名前が続々出てくる。昭和とは作家にとって良い時代だったのだなと改めて思う。2011/08/07
たくのみ
8
94歳の松原一枝さんが記した昭和の文壇の作家たちの交遊録。喧嘩、友情、愛憎、孝行、スキャンダル…その場居合わせたとしか思えない事実が、詳しく語られていて、よく憶えてね~と感心してしまう。かなりのメモ魔だったんですね。阿川弘之、遠藤周作、宇野千代、円地文子…並み居る有名作家たちにまじって、東大生だった、あの天本英世がパシリで登場。もはや鬼籍に入って20年以上たつ人も多く、昔なら1大センセーションのような奇行も、いい思い出となって埋もれていく。松原さん、若い頃はモテたんだろうね。2013/12/15
S.Mori
6
自らも作家だった著者が交流のあった文学者たちの素顔を書いていく本で、非常に興味深い内容です。川端康成、遠藤周作、宇野千代など誰もが知っている作家が多く登場します。この本を読むと歴史に名を残している作家たちの多くは、生き様も見事だったことが分かります。私は司馬遼太郎の大ファンなので、取材に行ったときに司馬さんが著者に示した優しさが嬉しくなりました。一番惹かれるのは宇野千代の生き方です。自分が惚れ込んだ人には、見返りを求めずに尽くすという生き方が、この本の中で鮮やかに描かれています。2019/07/16
Wataru Hoshii
3
島尾ミホの評伝にこの方が登場し、興味を持ったので読んでみた。昭和の文壇で幅広い交友を持った著者が、94歳にして語る想い出話。読み進むうちに何だか半分ぐらいは自慢話のような気がしてくるが、こうしたお嬢様育ちの天真爛漫さと、持って生まれた社交性が、彼女を文壇の人気者にしたのだろう。そして記憶力のいいこと。大谷藤子が富本一枝を取りあって中村汀女と喧嘩したとか、同時代人ならではの秘話が随所に。今ではほとんど忘れられてしまった文学者の名前もたくさん出てきて感慨深い。著者はこの本の刊行の翌年逝去。貴重な証言に感謝。2017/02/24