内容説明
甘える裕次郎、渇望する鳩山一郎、死を目前に想いを託した特攻兵や名将たち。平民宰相は妻の不貞をかこち、関東軍参謀はその名を連呼した。「なぜこんなにいい女体なのですか」と迫る茂吉、「覚悟していらっしゃいまし」と凄んだ美貌の歌人。ゆかしき皇族の相聞歌から、来世の邂逅を願う伴侶の悲哀まで―明治から平成の百年、近現代史を彩った男女の類まれな、あられもない恋文の力をたどる異色ノンフィクション。
目次
第1章 「しめ殺す程抱きしめたい」―青春の恋
第2章 「あなたの懐ろに飛びこみたい」―今生の別れ
第3章 「なぜこんなにいい女体なのですか」―作家の口説き文句
第4章 「モチロンアイシテル!」―夫婦の絆
第5章 「幼な日よりのわが夢かなふ」―皇室の相聞歌
第6章 「こんな怖ろしい女、もういや、いやですか」―女たちのドラマ
第7章 「来世も一緒に暮らしましょ」―天国のあなたへ
著者等紹介
梯久美子[カケハシクミコ]
1961(昭和36)年熊本県生まれ。北海道大学文学部卒。雑誌『AERA』の「現代の肖像」欄をはじめ、インタビュー、人物ルポルタージュを中心に記事を発表。2006年に初の単行本『散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糸車
34
読み友さんのおすすめ。著名人たちの恋文と淡々としているが柔らかい文章の解説。自分が碌でもない人間と思いつつ、気持ちを抑えきれず結婚を申し込んだ恋人に"俺のような悪人につかまってしまったと、一生を棒にふってしまったとあきらめて下さい"と冒険家植村直己さん(笑)。美しい言葉を紡ぐ詩人の醜い言動に比べなんと不器用な恋文でしょう。戦地に赴く父が娘に"大人になったらお母さんのような婦人になりなさいというのが私の最後の教訓です"と書き残したのも心に残りました。妻を愛し尊敬する夫の最後の恋文。何度も読み返したい本です。2021/09/08
fseigojp
27
多分、一番秘匿性が高いジャンル 相手を尊敬してないと没って終わり それだけに、読み応えあり 斉藤茂吉のは、本当に痺れる2015/10/04
たまきら
20
読み友さんから。公の立場からしか知ることがなかった人たちの、赤裸々な恋文。それらを非常にわかりやすく、そして批判することなく紹介している本で感動しました。その情熱はやさしいものから劣情に満ちたものまで、まさに十人十色。軍人、政治家、詩人(娘がいる身になって読むとろくでなしばかり)、作家(川端康成に苦笑)。日本の倒錯ではこの人を超える作家はないと思う谷崎の恋文は、もう作品。旦那さんに見せてたら「書いてほしいなあ」だって。どのスタイルにしようかな。いや~秀逸です。2016/06/13
超運河 良
20
鏡に映る我が顔を見たとき、本当に自分自身のために顔晴ってくれるのは誰ですかと聞くと、鏡に映る自分自身しかいないことに気がつく。生まれてから今日まで生きてこれたのも自分自身が顔晴ってくれたからこそ生きてこれた。鏡に映る自分にかがみのがという我をとるとカミになる。いつも一番近くで自分自身を見守ってくれてるのも自分。自分自身とは取り替えることもできない、ならば人生は自分自身を愛するしかなくなる。一番愛する自分自身の最高のファンとして自分自身へラブレターを書く事こそ愛。愛は見返りを求めないで行ってこそ愛。2015/11/13
ふろんた2.0
20
ラブレターは本来その相手にだけ読んでもらうもの。それが、一般公開されるなんて故人が知ったら恥ずかしいに違いない。外面のイメージと比較すると文章が何とも稚拙で率直でギャップがすごいのもある。それだけ愛があふれているということだが。2014/06/05