内容説明
戦争よりも平和、力よりも優しさ、命令よりも理解。先進国ではいまや、女性的な価値観こそがスタンダードとなった。テレビではゲイのタレントが大活躍し、ガリガリのモデルが「理想の女性」となり、男女の差異はどんどん縮小している。しかし、その先に待ち受けているのは「文明世界の滅亡」かも知れない…。「男性性の喪失」が引き起こす問題点を敢えて指摘し、フランスで大論争になった問題の書の邦訳。
目次
第1章 フェミニズムに覆われた世界
第2章 現代の全体主義
第3章 「女性化」を自ら望んだ男たち
第4章 想定外のできごと
第5章 資本主義がしかけた罠
著者インタビュー 「反動と呼ばれても構わない」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
seichan
7
フランスのおっさんが書いた「男性性が去勢される社会風潮」の考察。女は男の戦利品で性の享楽を楽しむ存在ってな関係から一転「愛」を喧伝されるようになった背景に、六十年代フェミはもちろん、男性を戦士でなく消耗品へと貶めた一次大戦の影響、ひいては資本主義の戦略などなどを出してきている。男性性と権力の本質を「死を命ずる力」と断じ、イスラム移民との摩擦を、その「ファロス性」から言及してる。少子化日本はフランスを見習えとか言われてるけど、中身はイスラム系移民の出生率が多くを占めてる感じかぁ。ローマ帝国の晩期みたい。2016/06/28
marty@もぶおん学
3
2022年のフランス大統領選で急浮上しているというエリック・ゼムール。どこかで聞き覚えのあった名前だったので、少し古いが引っ張り出してきた1冊。現時点で彼のおそらく唯一の邦訳書。生物学的に「男とは……」を決めつけるきらいはあるものの(歴代大統領は英雄色を好むが、ドゴールは例外でしょ)、フランス人らしいエスプリに富んだ議論を縦横無尽に展開しており、興味深く読めた。ベクトルは違うが、トッドやウエルベックに通ずる危機感もある。訳者(女性)は著者と見解が異なるものの、分かりやすく紹介しようと意図している点は好感。2021/10/16
鍵窪錠太郎
3
フランス人の著者が10年前以上前に書いた本の訳書で、内容も裏付けるデータに乏しいので素直には受け入れるべきでは無い。しかし2018年の現在、欧米諸国の右派政権誕生が目立ったり、女性の社会進出が遅れている中国の台頭など、本の内容は反動的とも思える一方で納得できる部分も少なくない内容だった。イマイチ落とし込めていないので感想は少なめに。個人的には男性性を否定する形でのフェミニズムに違和感を覚えていたので読んで悪い気はしないし、別のフェミニズムに関する本を読んでから再読してみるのも一興かも知れないと思っている。2018/02/09
シンザン
2
タイトルにビビッときて手に取ったけど、内容は昔ながらのフランス親父によるフェミニズム批判。カップル文化の話が多く、日本人としては「つかフランス人ってオナニーしないの?」ぐらいの感想。しかしNTR文化の本場だけあり、「男は(妻の)愛人を憎みながら崇拝し、恨むと同時に依存している」「神聖過ぎる妻に勃起できなくなった男達は、スワッピングを通して妻の神聖さを剥ぎ取り、欲望の対象へと回帰させる」「女性化したフランスは、“真の男”である移民の男根に妊娠させられたがっているかのよう」など“示唆に富んだ記述”が多い。2014/05/31
s2_ikeda
2
フェミニズムを女性ではなく男性の変化に焦点を当てて批判を論じている。女性性を優位にするために、“愛”を精神的に制度的に世界に浸透させたという観点は非常に納得がいく。その結果が、政治の弱体化や草食系男子の出現、さらには女性の家庭への回帰にまで繋がっている。僕はまさにここで批判されている価値社会で育った身なので、すぐさま男性化できるとは思わないし、それがいいかもまだ分からないが。2011/04/18