出版社内容情報
バカより高い壁があった・・・・・。
逃げず、怖れず、考えた最終解答。
私たちは死を遠ざけ過ぎてはいないだろうか。
見えないふりをしてはいないだろうか。
死を考えれば、世の中が見えてくる。
自分が見えてくる。
私の人生の記憶は父親の死から始まっています。人生は物心つく頃から始まるとすると、私の場合には人生が最初から死に接していたことになります。それで死という主題をよく扱うのかもしれません。解剖学を専攻した理由の一つも、そこにあるのかもしれない。そう思うこともあります。いまでは多くの人が、死を考えたくないと思っているようです。でもたまにそういうことを考えておくと、あんがい安心して生きられるかもしれません。ともかく私は安心して生きていますからね。(あとがきより)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
180
人は年を重ねるにつれて、心と体は永遠ではないことに気づく。自己には無限の可能性を秘めていると感じながら、徐々に世界の色に溶け込んでいく。原色を保ったままの個性が時に現れ、憧れや尊敬を集める者も稀にいるが、染まる自分と染まらない自分の狭間で葛藤しながら、現実を受け入れ生きていく。時に心と体が乱れ、心身の悲鳴を聞き有限を感じる。その声に耳を傾けないと、自己崩壊を早める。全ての人は死ぬ。死の現実は重く辛い。知らぬ者の死者数に実感はないが、目の前の一人の死は何万の死よりも重い。そして、自己を見つめ直し、前に進む…2019/07/18
ケイ
139
「死について考えるとあんがい安心して生きられます」というこの言葉に、なるほどと得心する。「なぜ殺してはいけないのか」という問いへの答えにも納得する。納得しながらも、この答えは受け取り手によって少しずつ違うようにも思う。叩き潰した時計と同じものは手に入るが、殺した命はもとには戻せない。難しいことをわかりやすく説明してくれる人は、とてもとても頭がいい人なのだと、真の意味で頭のいい人なのだと思わせてくれる人のひとりです。養老先生、今回も勉強になりました。2023/02/06
zero1
129
殺人は何故いけないか。人を殺すのは簡単だが再生出来ないからだと作者は述べる。人は必ず死ぬ。にも拘らず多くの人は死について考えない(後述)。死と生の定義は脳死の議論に限らず難しく、死は排除される。葬式後に塩を使うのは【排除の論理】があるから。子を殺す【間引き】に穢多、非人から死刑、靖国神社に魂まで及ぶ(後述)。【死体はモノではない】とも主張。「人間科学」を解りやすく新書にした一冊は解剖学者ならでは。何度目かの再読。2021/07/04
優希
113
必ず訪れる「死」について真正面から向き合っているように思えました。いかに死と向き合うのか、何故人を殺してはいけないのか、生と死の間についてなどに焦点を当て、今を生きるための知恵を示唆しています。死について考えることは生を考えることでもあり、この絶対的テーマの捉え方を改めて見直すきっかけになりました。人間の根本について考えることの重要性を感じました。ただ漠然としているだけでは堕落した生き方しかできないのでしょう。2016/06/09
てち
103
人は必ず死ぬ。死は宿命である。しかし、今の人たちは死についてなるべく考えないように生活をしている。死を忌むのではなく、「二人称の死」、「三人称の死」について我々はもっと考えなければならない。2020/06/03