内容説明
永世中立国で世界有数の治安のよさ。米国などを抜き、常に「住んでみたい国」の上位に名を連ねる国、スイス。しかしその実態は―。「優生学」的立場からロマ族を殲滅しようと画策、映画“サウンド・オブ・ミュージック”とは裏腹にユダヤ人難民をナチスに追い返していた過去、永世中立の名の下に核配備計画が進行、“銀行の国”でまかり通るマネーロンダリング…。独自の視点と取材で次々と驚くべき真相を明かす。
目次
ロマ(ジプシー)の子供を誘拐せよ
「悪魔」のスタンプ
それぞれの戦い―「祖国」と「人道」の狭間
中立国の核計画
理想の国というウソ(「相互監視」社会;民主主義社会;「ある政治家との対話」)
マネーロンダリング
著者等紹介
福原直樹[フクハラナオキ]
1957(昭和32)年東京生まれ。毎日新聞外信部ブリュッセル(ベルギー)支局長。北海道大学法学部卒。82年に毎日新聞社に入社。東京本社社会部で警視庁や運輸省担当などを歴任。94年より外信部に移り、六年間、ジュネーブ(スイス)特派員を務める
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感想・レビュー
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姉勤
55
「永世中立国」という響きと、アルプスの山々に羊の群れ、時計職人、チーズを頬張る牧歌的国民。そんなイメージ(誰が作ったんだか)を覆すスイスの実情。ノマ人の民族浄化、ナチへの積極的協力、核開発&核武装、マネーロンダリング、etc。本書は日本的ネガティブな事実を列挙しているが、欧州の要衝でも無く、重工業や農業を営む地勢も資源も無く、バルカンの隣国という地なれば他国民がケチをつけるほどの悪行とは言えず、当たり前の国と思える。かつて北朝鮮を地上の楽園と讃えた国民のスイスへの勝手なキャラ付けは、はた迷惑でしょね。2015/06/24
coolflat
19
核開発計画や民族差別(ロマ族の子供たちを誘拐して施設に入れる。外国人の国籍申請に対し適切な人物かどうかを住民投票で判断する)、またナチスの共犯、マネーロンダリング…。平和国家としてイメージされがちなスイスとは違った面のスイスが見えてくる。それらの根底には大国に挟まれ、常に利用されてきた歴史的背景があるのだと思う。大国に利用されないためにスイスは中立国を選択した。中立国を選択した根底には“不信”がある。スイスが相互監視社会だというのも納得だ。社会全体が不寛容で、この全体主義的な感じはどこか日本にも似ている。2017/11/06
林 一歩
19
平和とはなんぞや?綺麗事ではないんだよね。2014/07/02
ちくわん
18
2004年3月の本。平和そうなイメージの国。本書では自国の国益だけに固執する様を描く。そのための潜在的核保有であり、移民排斥。しかし、独仏伊に囲まれ、ナチスドイツやソ連に迫られた経験を持つスイスを国家として捉えた場合、果たしてこれを「黒い」としてしまうべきなのか。自国の状況を考える上で勉強になった。アルプスの少女、恐るべし!2020/02/08
紫光日
18
本書を読むと日本を含め世界の多くのメディアがあまりにもアメリカや欧州(ロシアを除く)を賛美しており、当然ながらスイスも例外でない。 だが、実際のスイスは外国人を排除したり、黒い噂が多いのが事実であり、他の欧州と同様に移民排除が活発化している。 故に国連にもEUなどの国際組織に加盟していない一方、スイスの言い分も評価できる。 国連やEUに加盟すると自分達のアイディンティがなくなると述べているがその通りである。2015/09/20
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