出版社内容情報
日本思想史を画す「知の巨人」。その肯定と共感の倫理学とは。中国から西洋へ、私たち日本人の価値基準は常に「西側」に影響され続けてきた。貨幣経済が浸透し、社会秩序が大きく変容した18世紀半ば、和歌と古典とを通じて「日本」の精神的古層を掘り起こした国学者・本居宣長。波乱多きその半生と思索の日々、後世の研究をひもとき、従来の「もののあはれ」論を一新する渾身の論考。
内容説明
日本思想史を画す「知の巨人」。その肯定と共感の倫理学とは。中国から西洋へ、私たち日本人の価値基準は常に「西側」に影響され続けてきた。貨幣経済が浸透し、社会秩序が大きく変容した18世紀半ば、和歌と古典とを通じて「日本」の精神的古層を掘り起こした国学者・本居宣長。波乱多きその半生と思索の日々、後世の研究をひもとき、従来の「もののあはれ」論を一新する渾身の論考。
目次
序章 渡来の価値観―「西側」から西洋へ
第1章 「家」と自己像の葛藤―商人、あるいは医者と武士
第2章 貨幣経済の勃興―学術文化の都への遊学
第3章 恋愛と倫理のあいだ―『あしわけをぶね』の世界
第4章 男性的なもの、女性的なもの―契沖、国学の源流
第5章 「もののあはれ」論の登場―『石上私淑言』の世界
第6章 源氏物語をめぐる解釈史―中世から近現代まで
第7章 肯定と共感の倫理学―『紫文要領』の世界
第8章 「日本」の発見―「にほん」か、「やまと」か
終章 太古の世界観―古典と言葉に堆積するもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
111
私は、常々、荻生徂徠に比べて本居宣長が矮小化されている気がしてならない。正岡子規/和辻哲郎/丸山眞男各氏からの評価も著しく低い。そんな中で上梓された先崎先生の本居宣長論。宣長の原点に古今和歌集があること、和歌と統治を巡る賀茂真淵と宣長の微妙な解釈の違い、折口信夫の源氏論との共通性など、新たな気づきが得られた。著者は、もののあはれ論とは「肯定と共感の倫理学」と言う。小林秀雄氏の「本居宣長」を初めて読んだ時「本居宣長の本質は直観と想像力。美質は明るさと単純さ」との断定に戸惑ったものだが、やはりそうなのか…。2024/07/15
owlsoul
13
貨幣経済の普及に伴い江戸思想に二つの潮流が生まれた。一つは後の自然科学へとつながる蘭学。もう一つは国学である。近代社会を前に、人々は普遍を探究する蘭学と、自らの礎を探究する国学とに自身の拠り所を見出した。GHQの検閲対象となった国学が、その本質に政治性を持つのは確かだが、本書は国学者本居宣長の仕事を通して、それとは異なる側面を描き出す。宣長は和歌の世界に日本の礎を見た。そこには男女の恋愛、好色の営みに宿る豊饒さがある。実存を無視した僧の高潔さや武士の誇りではなく、性愛という自然の力に、国家を発見したのだ。2025/04/13
tyfk
8
小林秀雄『本居宣長』は一通り読み、子安宣邦校注の『紫文要領』『排蘆小船・石上私淑言』も読んだので、本書の冒頭と末尾以外の本居宣長に関するサーベイは、小林秀雄なんかよりはるかにわかりやすい。ただ画期的な本居宣長論という気もしないのは、折口信夫や藤井貞和の論旨を並べているだけで、古典文学に対する独自の読みや解釈があるわけではないから。今日のグローバリズムにおける日本のあるべき姿を本居宣長の可能性として語ろうとするのは強引で飛躍があるように思えるし、子安宣邦のいう「宣長問題」のバージョンなのでは。2024/11/27
Ohe Hiroyuki
4
本居宣長の前半生を通して、現代にいたるまでわが国が常に「西側」の価値観と戦ってきたのではないかとの着眼点から述べられた一冊である▼本書の特徴は、本居宣長の生き様にフォーカスを当てていることにある。日記や手紙を通して本居宣長の息遣いを感じることがえできる▼著作そのものへの切り込みは必要最小限にとどめられており、それゆえ著作の全体像は著作を読まないとわからない。しかし、生き様が見えてきただけに、何だか本居宣長に親しみを感じることのできる一冊である。2024/07/07
Yoshi
2
国学の祖のような扱いで歴史で習ったが、もののあはれから本居宣長という人を見る書に出会いその後どんな人だったのか知りたく手に取った。 西洋の哲学に対して歌を持ち上げ、古事記や源氏物語から日本を紐解く。 情と絡み合う男女のどうしようもなさが生み出すもののあはれが日本の思想の根幹のような話は面白かった。 契沖という人を参考にしたそうだがその方の書も読んでみたいと思った。2025/01/23
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