出版社内容情報
「戦争の世紀」が再来した今こそ、高坂史観が役に立つ――! 「〈いい人〉の政治家が戦争を起こすことがある」「ロシアに大国をやめろと強制することはできない」――戦争の時代に逆戻りした今、現実主義の視点から「二度の世界大戦」と「冷戦」を振り返る必要がある。世界恐慌、共産主義、大衆の台頭、文明の衝突……国際政治学者の「幻の名講演」を初の書籍化【解題・細谷雄一】。
内容説明
「“いい人”の政治家が戦争を起こすことがある」「ロシアに大国をやめろと強制することはできない」―戦争の時代に逆戻りした今、現実主義の視点から「二度の世界大戦」と「冷戦」を振り返る必要がある。世界恐慌、共産主義、大衆の台頭、文明の衝突…国際政治学者の「幻の名講演」を初の書籍化。
目次
第1回 戦争の世紀―世界戦争と局地戦争
第2回 恐慌―大成の前の試練
第3回 共産主義とは何だったのか
第4回 繁栄の二五年
第5回 大衆の時代―資本主義と民主主義
第6回 異なる文明との遭遇
著者等紹介
高坂正堯[コウサカマサタカ]
1934年、京都市生まれ。京都大学法学部卒業。1963年、「中央公論」に掲載された「現実主義者の平和論」で鮮烈な論壇デビューを飾る。1971年、京都大学教授に就任。『古典外交の成熟と崩壊』で吉野作造賞受賞。佐藤栄作内閣以降は外交ブレーンとしても活躍。1996年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
105
高坂先生の本は昔から読んできました。昔はどちらかというと永井陽之介先生や衛藤審吉先生などと並んで保守的な政治学者であると思っていましたが、最近では非常に現実分析と将来を見通す点で見直されているように感じています。この本は1990年に講演された6回の内容をまとめられたものです。今まで発表された著作集にはなかったのですが、内容は今読んでも古臭さは感じません。また、古典(クラウゼヴィッツやモンテスキューなど)なども引用して楽しめました。2024/01/06
おせきはん
32
ベルリンの壁崩壊とソビエト連邦崩壊の間の1990年に行われた全6回の講演録です。人間や外交の本質を冷静に捉えたバランスのとれた講演内容を、一度だけ直接お聞きしたことのある高坂先生のソフトな語り口と重ねつつ味わいました。2024/03/18
はるわか
16
戦場ではすぐ横にいる人間を裏切らないために人間は戦う。/第一次世界大戦で戦闘が欧州全土に広がってしまった理由は、兵器の技術が進歩し強大な軍事力を使う立場の軍人が自信満々だったこと、そして政治家は平和が続き平凡なよい人ばかりになり責任を放棄したこと(権力に対する意識の欠如)/国際政治で敵味方はっきりしない場合、最善の方法は仲間にすること/第二次世界大戦の指導者が合理性を欠いていたのは、大衆の時代に大戦争を行うには人々の頭を狂わせなければ(熱狂)ならないため。大衆社会において戦争を合理的に指導することは不可能2024/02/07
kuroma831
14
高坂正堯の「新著」が2023冬に出る?どういうこっちゃ?と思ったら、1990年に行った一般向け連続講演の初の書籍化とのこと。高坂正堯が6回の講義で二十世紀を振り返るということで、平易な語り口ではあるものの、さすがに大学者の巨視的歴史観が見えて面白い。時代性の影響は非常に強く、冷戦崩壊の秒読み段階であり、日本経済の絶頂期で日米貿易摩擦の激しい頃ということもある上に戦後保守論壇の雄の講演というポジショントークもあり、「日本の異質性」論など含め、30年後の目線では古さを帯びた話も多い。2024/01/02
逆丸カツハ
13
非常に優れた現実と理念のバランス感覚を保有していることが話の端々から伝わってきて感銘を受けた。妥協は政治の本質と語ることに共感する。優れた妥協は自他の限界を見定めることに要諦があるだろう。それを失った結果が分断の世界だと思う。1点気になることがあるとすれば、思想としてのダーウィニズムと現象としての自然選択は区別して考えるべきなのではないかということだ。現象としての自然選択は人間の意思そのものを内に含むほとんど結果論のようなものではないかと。2023/12/03