出版社内容情報
誤診率6割の理由は診断の難しさ。疾患の併存、症状の複雑さなどに医師の慧眼が求められる。第一人者による「隠れ発達障害」の実態。
内容説明
その診断は間違いかも。ASDやADHDはこうして見逃されている!メディアなどを通してよく耳にするようになった「発達障害」。が、その誤診率が高いことは知られていない。原因は、他の精神疾患との併存、症状の類似と複雑さ、医師の知識不足と臨床経験の少なさ。長い間、うつ病や依存症と診断されていたが実は違っていた、ということも稀ではない。第一人者が初めてその実態を報告する。患者や家族、医師も必読!
目次
第1章 発達障害かもしれない
第2章 ASDとADHD
第3章 うつ病ではない?
第4章 双極性障害か、発達障害か
第5章 統合失調症という誤診
第6章 パーソナリティ障害は存在しない?
第7章 摂食障害だけではない
第8章 神経症という誤診
第9章 依存という併存症
第10章 発達障害と犯罪
終章 誤診への対策
著者等紹介
岩波明[イワナミアキラ]
1959(昭和34)年、神奈川県生まれ。東京大学医学部医学科卒。精神科医、医学博士。発達障害の臨床、精神疾患の認知機能の研究などに従事。都立松沢病院、東大病院精神科などを経て、2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授、2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼務。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
85
発達障害はどうして誤診されやすいのか、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)を中心に成人期の発達障害の診断と診療に関する問題点を検討した本。発達障害は多数の疾患が含まれ、思春期や大人になってから急に発症することはないこと、症状が軽減するわけではないことの特徴をあげ、うつ病、統合失調症、摂食障害、神経症のなかにまぎれこんでいる発達障害について紹介している。誤診によって、患者にどんな不利益が生じているのか、もっとクリアな回答があったらよいのにと思う。→2021/09/24
ころこ
40
選書だと中には難しい本がありますが、本書はとても平易です。発達障害は生まれつきのものですが、うつ病、双極性障害などの精神疾患との並存も含めた鑑別の困難さ、犯罪や依存との関係を論じています。亡父は今思えばトゥレット症候群で、親戚の集りで言わなくても良いことを発言して驚かせていましたが、特に何の問題も無く生涯を全うしました。昔は仕事にそこまで規律が求められなかったために支障なく生活でき、顕在化されなかったケースは案外多かったのではないか。亡父も現在生きていく人間だったら困難に直面したことは容易に想像できます。2021/03/04
またの名
15
脳科学と名乗る存在が感情や精神をさもキレイに解き明かしたように語るけど「事実はまったく異なっている。いまだに脳については、基本的なメカニズムについても、ほとんど解明されていない」と注意。症例の豊富な本書の中で背後の発達障害が気づかれずに下される診断名は、精神科で見る病名をほぼ網羅してるほど。診断の決め手も生育歴か発達障害用の薬剤を使ったら効いたという事実くらいで、明快で理論的な概念とかも出てこない。「残念ながら医師によっては、当事者よりも知識が劣っている」分野なので、ドクターショッピングもやむなしと容認。2021/04/09
noko
6
ADHDからのDBDマーチを食い止めるにはどうしたら良いか。ADHDだから起きるわけではなく、特性から起こるトラブルに対して周囲の対応がきっかけで起こる二次的障害なので、家族は対応の仕方を注意しなければいけない。統合失調症とASDの区別が難しい。社会適応の低下を示す。人格水準の低下がある。幻聴や被害妄想がある時は統合失調症と考えていい。しかし幻聴や被害妄想を患者がなかなか打ち明けてくれなかったり、そもそも被害妄想を妄想だと思っていない病識のない人もいて、難しい。血液検査とか数値データで見られないって辛い。2023/10/25
ハナさん*
2
2021年2月25日発行(版、刷数記載なし。初版第1刷?)。市図より。現実問題として誤診率が高い(と、著者は主張する)大人の発達障害について、その原因と実例を記したもの。誤診の原因としては、診断する医師の知識不足・臨床経験の少なさ、他の精神疾患との併存率の高さ、症状の類似性・共通性などが挙げられている。それらは、医師の未熟さや勉強不足によるところが大きいが、精神医学自体の未熟さに由来するところもあるという。つまり、発達障害に限らず、精神疾患・障害を診断する上で有効な生物学的指標を、発見し得ていないことだ。2024/03/09