内容説明
それぞれの噺の本質を捉え、落語を進化させ続けること。その上で「江戸の風」を吹かせること。これが、著者が自らにも課した「現代の名人」に求められる条件だ。声質、語りの速度、所作といった身体論から、「抜け雀」「品川心中」「死神」等の新たな落ちの創造に至るまでを、全身落語家が熱く語る。進化の具体例として、志らく版「鉄拐」一席を収録。
目次
第1章 江戸の風
第2章 人情噺の落語化
第3章 名人の落語を聴くと眠くなる理由
第4章 落ちの進化
第5章 これぞ古典落語十席
第6章 落語は果たして飽きるのか
著者等紹介
立川志らく[タテカワシラク]
1963年、東京生まれ。85年に立川談志に入門。95年、真打昇進。創意溢れる古典落語に加え、映画に材をとった「シネマ落語」でも注目される。落語界きっての論客としても知られている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たくのみ
17
「赤めだか」談春の出来過ぎる弟弟子、よきライバルでもある、志らく師匠の落語論。「努力はバカに与えた希望」というチャップリンの精神。「時そば」は一文を掠める詐欺の話だから手口を華麗に見せてこそ光り輝く。泣かせるのが落語の本質ではない。江戸の風を吹かせ、権力をリアルに描き、リアリズムを表現させる「火炎太鼓」。「鰍沢」はシャイニングと同系列のホラー。江戸の落語をそのままの「子別れ」はあまりにも陳腐という直言。見事に仕立て直されたオチに驚くばかりです。2016/04/29
えみ
14
2011年の本だが、素晴らしく面白かった!志らく師匠の落語への工夫が、ここまで出していいのかというほど明らかになっている。巻末には、鉄拐が1席まるまる載っている。しばらく志らく師匠聴いてないが、また聴きたくなった。2019/10/27
またおやぢ
12
”立川志らく”なんて嫌いだ。屁理屈ばかりこね回して、さほど面白くもないギャグを放り込んでは客を馬鹿にし、演劇や映画にうつつを抜かしてばかりいる。そのくせ、一度落語を始めると、談志譲りの生真面目さで、聴衆を物語に引き込んでしまう。落語に登場する人々への愛情溢れる語り口は、師匠が定義した『業の肯定』そのものやないかい!にも関わらず、それらを破壊しようとやっきになっている、才能溢れる 立川志らく なんて大嫌いだ…と思ったのはもう昔の話。彼の率直で愚直な落語は素敵だ。素直に思うも何故か悔しさもつのる…そんな一冊。2016/05/20
kera1019
11
基本はやっぱり談志師匠の持論がベースになってるけど「全身落語家読本」に比べると談志イズムを継承しつつも志らく師匠の言葉が印象強くなってて進化論という意味では感得です。内容に関しては違和感を感じる部分もありますが、志らく師匠のキャリアを持ってして視座の鋭さ、分析力、考察の深さなど、更に深く落語に関わっていくっていう、その姿勢にそれだけ落語に対する愛情が深いんやなぁって感動します。2014/03/09
くま
8
談志至上主義は仕方ないから置いといても面白かった。いけてない落語家がなんでいけてないのかの辺りが、明確に論じられてて腑に落ちてスッキリ。 喬太郎師はものすごい面白いけど、なんか違うと思ってたのが、江戸の風が吹いてないっていうのが一番納得だったなあ。志らく師の今後の進化が楽しみです。2012/05/17