内容説明
世界を席巻したグローバリズムは、「ローカルであること」を次々に解体していった。たどりついた世界の中で、人は実体のある幸福を感じにくくなってきた。競争、発展、開発、科学や技術の進歩、合理的な認識と判断―私たちは今「近代」的なものに取り囲まれて暮らしている。本当に必要なものは手ごたえのある幸福感。そのために、人は「ローカルであること」を見直す必要があるのだ。
目次
第1章 山里にて
第2章 歴史の意味
第3章 思想のローカル性
第4章 グローバルな時間と私たちの仕事
第5章 日本的精神
第6章 九月十一日からの三カ月
終章 「未来」をどう生きる
著者等紹介
内山節[ウチヤマタカシ]
1950年東京生まれ。哲学専攻。立教大学大学院教授。現在、東京と群馬の山村に暮らす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
69
「近代化社会の申し子といえるグローバリズムは、継承される技や慣習、説話など、私たちの足元にあった「もの・こと」を次々に解体していった。その結果、私たちは手ごたえのある暮らしや幸福を喪失してしまった」という。グローバリズムの影響も大きいだろうが、日本国内の政策の影響も見逃せないはず。 30年続くデフレでは時代閉塞の憂鬱はきつい。東京などの一極集中の一方、地方の疲弊は目を覆うほどの惨状。地方見殺しの政策は終わらせないと。 やや古い本なので、ピントが少しずれてるか。 2025/03/13
べる
17
自然と人間がどのような関係であるべきかと考えるとき、この思考の幅を広げるのは過去への検証だと述べる。歴史の進歩、発展や人間の自由を追求した近代的な理念が自然を破壊した。自分が存在する「里」(還っていきたい場所)をもち、その「里」を組み立てなおす必要がある。嘗ては生涯を自然の中で生き抜く能力をもった動物に対する敬意があり、動物と人間の物語も多くあった。語り継がれていく言葉、作法、習慣、行事と関係を結び、生きている歴史になる必要がある。私達の支えである自然を大切に。イラン映画『風が吹くまま』を観てみたい。2019/11/16
ハチアカデミー
13
この著者は、日本のソローなのかも知れない。群馬の山村に暮らす哲学者のエセーである。グローバル化がもたらす災禍と、それとは異なる社会の在り方として、ローカル=里という「人間たちが直接かかわれる大きさ」の共同体像を提示。そこから歴史について、労働について、精神について、世界情勢について考え直そうと著者は言う。いまある社会は完成されたものでもないし唯一の形でもない。問題を先延ばしにするのではなく、しっかりと見つめ、考え、解決していくことが必要なのだ。村の相互扶助システムともいえる「山上がり」という風習も面白い。2014/07/29
オカピー
10
「里」という思想、内容となかなか結び付かなかった。9.11からの考察で、一強の思想や行動が、必ずしも正しいとは限らない。その渦に巻き込まれて、取り込まれていくことが果たしていいのか考えさせられた。 2024/08/15
やいっち
6
一昼夜で一気読み。12日(水)「近代化社会の申し子といえるグローバリズムは、継承される技や慣習、説話など、私たちの足元にあった「もの・こと」を次々に解体していった。その結果、私たちは手ごたえのある暮らしや幸福を喪失してしまった。」というが、グローバリズムの影響も大きいだろうが、日本国内の政策の影響も見逃せないはず。2025/03/13