内容説明
日本最大の貯水量を誇るダムが乗っ取られた。人質は発電所員と下流域の市町村。残された時間は24時間。同僚と亡き友の婚約者を救うべく、ダムに向かう主人公・富樫のもう一つの、そして最大の敵は、絶え間なく降りしきる雪、雪、雪…。吹雪に閉ざされ、堅牢な要塞と化したダムと厳寒期の雪山に展開するハードアクション・サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
247
素晴らしい!映画の存在は知っていたが、これほど傑出した作品だったのか…メカニカルな部分で若干分かり難い箇所があったので、映画で確認したい。冒頭から漲る緊張感。雪山の苛烈さ。挑む山男達の気概と決意。その張り詰めた空気はひと時も霞む事無く、ラストまで一気に疾駆する。主人公は決して精神的にスーパーな男ではないが、挫けそうになった瞬間に立ち昇る死んだ親友の幻影が、生きようとする強い意思に転嫁される。己を奮い立たせる葛藤が冒頭シーンに回帰する構成の妙。ラストは自らに課した義務を果たした彼の雄姿に、嗚咽がこみ上げた。2021/02/09
だんたろう
32
和製ランボーというか、不死身のダム運転員が主人公。たった一人でダムジャック犯に向かっていく。ともすれば漫画になりがちなところを、圧倒的な取材力とスピード感あふれる展開でグイグイ引き込まれる。調子に乗ったところで、どんでん返し的に急展開。最後まで飽きさせない構成は見事。冬のダムを密室に例え、過激派に金に目を眩ませる設定が面白い。雪もガスもなくたって、自分が見えなくなったらホワイトアウト。足下さえ見えなくても、自分の心が見えていれば、道を間違うことはない。そんな気持ちにさせられる作品。2010/07/20
達ちゃん
29
真保さん初読です。富樫、千晶、奥田の3人の目線で交互に進んでいくダム乗っ取り。ハラハラドキドキの展開で、ハッピーエンドを期待しつつも手に汗握りながら最後まで読み切りました。山の男の友情、すごく良かったです。2015/11/05
mj
22
犯罪者によって陸の孤島となったダムでの一運転員の活躍/活劇。大きな構造物がお好きな方には楽しめる??記述も多々あるように思います。私にはなんのことだかわかりませんでしたが。それにしても長い... 話の展開上、必要なことはわかるのですが、銀行の話などもう少しチャッチャとやってもらえませんでしたかね。あ、すみません、単なる私の好みの問題でした.....2016/09/23
くまんちゅ
20
占拠されたダムから仲間と亡き友の婚約者を救うために深い雪の山中を駆け回る富樫。一見、スーパーマンの様な活躍ぶりにも見える富樫だが、何回もくじけそうになったり、弱気な自分を叱咤する場面などは、ただのスーパーマンではなく一人の人間として、自分の弱さとの葛藤が見えた。吉岡の遭難死への責任感や、岩崎の死が彼を突き動かす原動力になっていたのだろう。ミステリーとしてもどんでん返しがあり楽しめた。2011/06/28