出版社内容情報
川島 幸希[カワシマ コウキ]
著・文・その他
内容説明
子どもの頃、英語嫌いだった漱石は、いかに学び、どう教えるようになったのか。漱石が作った入試問題、漱石の授業参観、実践した授業方法、教え子との交流などを織り込みながら、その現代にも通じる英語教育論を明らかにする。
目次
第1章 漱石の英語力
第2章 漱石の英語教育論
第3章 英語教師夏目金之助(松山・熊本時代)
第4章 英語教師夏目金之助(帝大・一高時代)
第5章 作家漱石と英語教育
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
37
英語教師としての漱石を関係者の証言や資料(作成した試験問題!)などから検証する。松山、熊本、そして東京と、中学や高校によって教え方が違ったり、どこでも生徒たちの面倒見はよかったりと、渡英後に鬱病になって癇癪持ちのイメージが強い漱石の別の側面が垣間見えて興味深い。漱石ら明治の秀才たちの高い英語力はなんと言っても、授業がほとんど英語で行われていた所にある。しかし、英国から戻った漱石は、日本の大学生の英語力の低下に愕然とする。大学がエリートのものではなくなったのだ。日本人と英語の関係を考える上でも参考になる。2020/02/09
kaoru
14
文学者としての漱石については様々な研究本が出ているけれど、本著のように英語教師としての彼を深く掘り下げた本はない。英語嫌いであったにも関わらず若い時分より優れた英語力を持ち、松山中学でも熊本五高、東京帝大でもハイレベルの講義を行う。講義に取り上げた教材や試験問題が記されているのも嬉しい。面倒見の良い教師として様々な生徒に慕われたのは周知のとおり。「教師に向かない」と自省しつつも誠実に生徒と向き合って質の高い英語教育を施した漱石に改めて感銘を受けた。2018/08/22
たくのみ
6
「音声面での英語力に自信を持てなかった」という漱石。しかし33歳で英人宣教師を論破するほどの英語力を持っていた。新渡戸稲造とは当時の予備校時代の同級生。その頃英語力は中二レベルだったのが、猛勉強と多読のおかげで、1年半で英検一級レベルの英語力を身に付ける。当時の漱石の直筆英作文、「縁日」「着物」などの作漱石の自室の英作文が残っていた、東北大学の図書館もすごい。2016/09/30
atyang
6
文豪夏目漱石の英語教師時代にスポットを当てた珍しい本。芥川龍之介との交流や、松山中学での実際等の面白いエピソードが豊富。今の英語教育の問題点が当時から既にあったことにも興味が湧いた。2013/12/08
さくら
5
文豪としての顔ではなく、英語教師に焦点を当てたもの。教師という職に対する姿勢、生徒に向き合う姿勢は漱石の人柄が表れていると感じた。2016/11/02