内容説明
著者は長いこと旅の映画にひかれてきた。そしていつか「映画の旅」について調べたいと思い、本書に取り組んだ。そして焦点は作品や上映の歴史よりも、観客の視線と記憶、映像と体験との交わりに移っていった。ブラジルへ旅した日本映画は、いかにして日系移民の揺れるアイデンティテイに触れたのか、彼らの望郷を誘い、またいやしたのか。そもそも故郷とは何か。本書は映画から見た日系人の文化史・心性史である。
目次
第1章 フィルムの長い旅
第2章 村にシネマがやってきた
第3章 二つのナショナリズム―地球の裏側の聖戦
第4章 「日本戦勝」と映画
第5章 幻の移民史映画『ノーヴォ・エル・ドラード』
第6章 活劇が描く同化イデオロギー―『南米の広野に叫ぶ』
第7章 戦後移民と日本映画の黄金期
第8章 二世女性監督の誕生
第9章 おわりに―郷愁と映画