内容説明
本書は、世界的な政治学者にして歴史家である著者が、18世紀のイギリスに、19世紀のドイツに、あるいは戦前戦中の日本に読む者を誘いつつ、卓抜なアフォリズムを交えて今日の難局をサバイバルする術を授けてくれる。
目次
「戦後処理」の難しさ
ロシアの悲劇
独裁者の弱点
同年生まれの異なった人生
二つの統一ドイツ
混沌の世を面白く見る方法
マハンと経済学
いま再び「連邦国家論」
「田沼意次批判」考
陸奥宗光の時代と現在〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさにい
13
実は、イギリスの近代史において、疑問に思っていたことがあった。なぜイギリスで議会が起こったのかということ。名誉革命も、権利請願も議会からなのだが、よくその当時の王が許したなということ。議院内閣制も不思議だった。だって、王なのだから好き放題するのが普通でしょ!と思ったりしていた。色々調べたのだが、この本に出会う前までに分かったのは、イギリスの王はその権力が弱かったということまで。ならば、何で弱かったの、ということがまた疑問として生じた。なんとこの本には書いてあったのですよ。学生時代からの疑問解消した。感激!2017/02/28
KAZOO
11
雑誌に連載されていたものをまとめたものです。まあ時事的なものもあるのですが、歴史から学ぶということで、「バブルで亡んだ国はない」や「日本政治史から考える」が印象に残りました。ただ表側だけを見るのではなく、その本質は何かということとその後の検証が重要であるということで非常に参考になりました。2013/11/24
バルジ
6
読みやすい小論ながら随所に著者の卓越した分析眼が光る。『世界地図の中で考える』でも見られた「悪」を悪として断罪せずその「悪」の中にも効用を認め人間社会の進歩に寄与するという逆説的な論理を本書でも随所に披露する。人間の利己心を肯定的に捉えるその姿はどこかアダム・スミスを彷彿とさせる。また本書を読んで感じるのがナショナリズムに対する二面的な視座である。一方では強く警戒し一方では美徳として必ずしも排撃しない。恐らく著者自身が自身の抱くナショナリズムを意識しつつ危険性をも認識していたからこその視座だったと思う。2021/04/20
かみかみ
6
歴史を題材に現代日本の問題解決のための教訓を引き出そうと試みたエッセイ集。実力主義者だった田沼意次が権勢を振るっていた頃、賄賂の見返りとしての昇進を断られた人物が彼の失脚後に賄賂政治家として彼の悪評を流布したことに日本人の負の国民性を見出すなど訓戒を垂れる一方、バブル崩壊により進路を見失う日本にオランダや東西統一後のドイツの例を引いてバブルで亡んだ国はないことを強調するなど、一つ一つは短いものの粒揃いのエッセイから構成されている。2019/11/28
北山央晃
6
高坂教授というと野球のナイターの実況に出てくるけったいな関西弁の先生という認識しかなかった。もう亡くなってからかなり経つんですね。この著作は近代の歴史の中に現代的意義を見いだすそういう試みのような気がする。歴史を読み解く問題意識は古くてあたらしい。そしてイデオローグに囚われず悪までも冷徹に見据えなければと感じた。それが知性というものだろう。2016/04/14
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- 和書
- 笑本春の曙