内容説明
十字軍遠征をめぐり、イギリス、フランスなどの西欧キリスト教勢力とイスラム教勢力がしのぎをけずっていた十三世紀―。聖地巡礼とローマ教皇拝掲をひたすらに願った景教僧の旅は、否応なく国際情勢の渦に呑み込まれていった…。景教の分かり易い解説をはじめ、当時の中央アジア、ヨーロッパ諸国の情況をやさしく丁寧にひもときながら、彼らの劇的な人生とダイナミックな歴史のドラマを描き出す。西欧近代中人の視点ではない、新しいアングルから世界史に迫る歴史ロマン。
目次
私と西域、景教との出会い
1 旅の前に―前提としてのデータ
2 掃馬、馬克斯の旅―シルクロードからペルシアへ
3 サウマの旅―ヴァティカン、西欧へ
4 ヤフバラッハーの旅―非喜交々の人生航路
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ようはん
12
モンゴルがユーラシア大陸を席巻した十三世紀後半に中国から西方に向かった2人のウイグル人景教(ネストリウス派キリスト教)僧が主役。その内の1人であるバール・サウマはバチカンやパリにも赴くまでに至るがメインとなるのはペルシアのイル・ハン国(フラグ・ウルス)における景教の栄枯盛衰となる。モンゴル国家は宗教面のフリーパスが特徴的であったが終盤のムスリムの景教弾圧を見るに宗教の共存の難しさを感じる。2020/03/03
印度 洋一郎
5
13世紀、マルコ・ポーロと同時期に、元帝国の首都大都からユーラシア大陸の反対側、フランスのボルドーまで行った、二人のウイグル人キリスト教聖職者の足跡の記録。二人が属する宗派である、東方キリスト教の一大勢力だったネストリウス派、そして二人が住み着いた中東のモンゴル帝国であるイル汗国の歴史も合わせて解説しているので、とてもわかりやすい。時代背景として十字軍の侵攻と、イスラム圏、ヨーロッパ諸国、モンゴル帝国の三つ巴の国際関係がある。後半は、中東のキリスト教がイスラム教に押されて衰退していく過程に詳しい。2014/04/19
卯月
3
職場本棚。マルコ・ポーロと同時代。元の大都(現在の北京)から、ウイグル人の景教僧(キリスト教ネストリウス派)サウマとマルコスが、イェルサレム巡礼目指して旅立つ。ネストリウス派のどこがどう異端なのか、説明読んでもサッパリ解らん(汗)。二人が辿り着いた、モンゴル人が治めるイール汗国のバグダード。そこで何と、元から来たマルコスが景教法主に就任。サウマは法主の推薦により国王の使者として西欧へ赴き、ローマ法王や仏国王、英国王とも面会。しかし、イール汗国でムスリムが勢力を伸ばし、景教は衰退。激動の時代で非常に面白い。2016/02/20
宵子
0
昔、図書館で借りて読んだ。東方見聞録の逆版というか、元から西洋へ行った景教の僧の話。 元朝以降のネストリウス派の繁栄から衰退まで書かれている。 でも、ヨーロッパのキリスト教徒には異端扱いされたり、無理やりカトリックにならざるを得なかったりとなかなか悲惨。