出版社内容情報
誰にだってある。このままではいけないと、ふと運命を変えたくなるときが。あまりにも不運な男は、ある日、「人生のギヤ」を切り替えようとする。「ボブ」と名乗る娘の思春期に悩み、仕事にも疲れ切ったシングルマザーは、酒に逃げるのをやめることにする。少女時代、親友との友情のために映画出演をやめた女性は、ふとあることに気づく。完璧には程遠い人生を受け止めて生きる愛すべき人々を描く連作短編集。
【目次】
内容説明
不幸の裏階段でとぐろを巻くのは、もうやめないといけない。自身の境遇を受け入れ、多くを望まず静かに暮らしてきた人たちにふとおとずれる転機を、この上なく鮮やかに描くゴンクール短編小説賞受賞作。
著者等紹介
オヴァルデ,ヴェロニク[オヴァルデ,ヴェロニク] [Ovald´e,V´eronique]
1972年生まれ。2008年、『Et mon coeur transparent』でフランス文化テレラマ賞を受賞。『Ce que je sais de Vera Candida』は、2009年に高校生のルノードー賞、フランス・テレビジョン賞、2010年「ELLE」読者賞受賞。2024年、本作でゴンクール短編小説賞受賞
村松潔[ムラマツキヨシ]
1946年、東京生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
102
ゴンクール短編小説賞受賞作。面白かった。各編は20頁程度で短く、ある1人の人物の暮らしと心の機微をさっとスケッチしている。その人物たちがゆるやかにつながり、彼らの暮らす街が浮かんでくる。裕福でもなければ貧窮しているわけでもない、心理もフランス小説的な微細な分析には入らない、自己欺瞞のインテリも登場しない。緩いと言えば緩いのだが俗っぽくはなく、等身大の人たちの暮らしや悩みに親しみを感じる。フランスでもこういう小説があるんだなと感心しながら読んだ。2026/03/13
愛玉子
50
人はみな自分の不完全な人生の主人公で、他の人の不完全な人生の脇役なのだ。ありきたりな、時に絶望してしまいそうな不幸に彩られた冴えない人生に、それでもふと光が差す瞬間。連作というほどは繋がっていないけれど、前の話の登場人物がどこかで関わっていてニヤッとしたりハッとしたり。人生は素晴らしい、と両手を挙げて賞賛するわけではなく、どこかシニカルなユーモアが込められつつ軽やかに描かれた文章の読み心地が良く、ああこれ好きだな、と思いながらの読書になりました。裏表紙の津村紀久子さんの文章が良き。もっと厚くても良いなぁ。2026/03/20
Willie the Wildcat
48
頭に浮かんだのが、Tomorrow is another day♪人生の山谷も、意識・無意識にヒトの輪がつながることで、気づけば目の前に拓かれる道。直接・間接、恣意的・無意識、部分的・網羅的など、様々な形式をとる相互補完が導く赦しや救いなどの”光”。諦めや妥協でもなく、不完全性の認識と共に、それも人生の一端として向き合う姿勢。光の先、心の平静也。解消ではなく折り合い、貴重な支えと時間。文中の顕現やCQFDは皮肉ではなく、願いが込められてる感。2026/05/10
ケイティ
38
「不完全」というタイトルが絶妙な連作短編集。誰もが決定的なダメージや欠損があるわけではなく、緩やかな諦観、アンニュイさとシニカルさを持ち合わせている印象。どこにも明確には着地しないけれど、気だるさと切なさが心地いい。このごちゃ混ぜな感情の取り扱いに作為がなく、何もかもさりげないのもフランスっぽい空気感。「自分の人生の主人公は自分」という手垢のついたフレーズを嫌悪感なく思い浮かべられる。どの話も個々の人生として存在し、好みの差こそはあれ全作品が唯一無二に感じられた。それぞれのエンディングの文章もとても良い。2026/04/29
フランソワーズ
34
変わり者の生き様の断片を、湿っぽくならずに、ユーモアとシニカルで描いてゆく連作短編集。この作家の特徴でしょうか、具体的な事物の描写がすごく面白い。ちなみにお気に入りは、『”あなたは華々しい成功を収めるでしょう”』(特にエヴァの父親がある日突然、シダ研究をやめてしまうくだりは素晴らしい)、『地区の女王』、『オーギュスト・バラカの狼狽』。2026/04/19
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