出版社内容情報
20世紀最大の作家に宛てた百通以上の幻の手紙から甦る、一人の女性の人生。没後百年を迎えるカフカの恋人として知られるチェコ人女性ミレナ。カフカから彼女への手紙は後に出版されたが、失われてしまったミレナからの手紙には何が書かれていたのか。作家への愛と情熱、父や夫との葛藤、そして自身の孤独と叫び。別離後もカフカを慕い続け、強制収容所で絶命した女性の魂を、現代の作家が甦らせる。
内容説明
20世紀最大の作家への百通以上の恋文。彼を慕い続けた恋人の人生が甦る。カフカの恋人として歴史に名を残すミレナ。彼女がカフカに送った幻の手紙から描かれる、はかなくも濃密な二人の愛の記録。
著者等紹介
ジョンシュレー,マリ=フィリップ[ジョンシュレー,マリフィリップ] [Joncheray,Marie‐Philippe]
1974年生まれ。ソルボンヌ大学で現代文学、国立東洋言語文化学院(INALCO)で中国語を学んだ後、中等学校と高校で十年間フランス語を教える。現在は作家業に専念している
村松潔[ムラマツキヨシ]
1946年、東京生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
46
カフカとミレナ、二人の間で交わされた書簡。その完全に失われてしまった半分を想像によって再現している。残念ながら実存する『ミレナへの手紙』は未読だし、二人の関係がどのようなものであったか正確に知らないのだが、それでもまるで作者にミレナが憑依して書かれたのではないかと感じるほど魂が籠められた文章だった。読んでいてプライベートに踏み込んでいるような、禁忌を犯しているような感覚に襲われることも屡々。簡素な試みではあるが非常に実験的な文学作品だとも思う。但し、はっきり言うと小説としては読んでいてそこまで面白くない。2024/03/01
星落秋風五丈原
26
作家フランツ・カフカは婚約は何度もしたが、結局一度も結婚しないまま結核で亡くなった。一方、書簡の書き手といわれるミレナ・イェセンスカーは、二度結婚し、一度同棲している。結局二人が結ばれなかったのは、その違いにあるのではないか。カフカは、愛する人への思いを書くだけで満足できたが、ミレナはプラトニックでは満たされない。いつも傍にいて、存在を感じていたかった生身の女性である。母を亡くし、厳格な父のもとに育ったミレナは、最初から世間の枠にはまるつもりはなかった。帝国崩壊後の若い民主主義国家チェコを謳歌していた。2024/05/02
ケイトKATE
24
フィクションであれ、ノンフィクションであれ、有名人に関する本を書いてみたいという気持ちを掻き立てられるものである。『あなたの迷宮のなかへ』は、フランツ・カフカの恋人ミレナ・イェセンスカーの消失してしまった手紙を創作した本である。私は、カフカの小説も、カフカに関する本も読んでいないためか、ミレナのカフカへの思いの強さは伝わったものの、全体的に楽しめなかった。カフカ好きや詳しい人には楽しめるのかな。 2024/04/26
かふ
22
ミレナの手紙が通常のラブレターにしか感じられないので、物語に深さがない。ミレナのイメージがカフカの分身のような神話性があるのだ。実際にはミレナもラブレターのような手紙を出したのかもしれないが、それはフェリーツェの時でそういう恋愛沙汰は終わっていて、もう一段高いレベルの文通(プラトニック・ラブ)だとイメージしてしまうのだ。それはミレナがやたら「愛している」という言葉を使い過ぎるからただの愛情に飢えた女にしか見えない。カフカはミレナの夫とも知り合いなのだから、不倫するわけには行かないのである。2024/06/29
信兵衛
21
ミレナ本人だけでなく、カフカという人間像もくっきりと浮かび上がらせています。 その点、お見事!の一言。2024/03/31