- ホーム
- > 和書
- > 文芸
- > 海外文学
- > その他ヨーロッパ文学
出版社内容情報
会合をドタキャンする為の小さな?が、作家の人生を激しく狂わせていく。ベルギー発のミステリアスな実験小説。AKO文学賞受賞。
内容説明
気乗りしない会合を断る嘘が作家の人生を激しく狂わせる。この作品を書いたのは、けっきょく誰なのだろう?著者の創造物「作家T」が、著者本人を創造しているかのような、複雑に入り組んだメタフィクション小説。AKO文学賞受賞。
著者等紹介
テリン,ペーター[テリン,ペーター] [Terrin,Peter]
1968年、ベルギー、西フランダース州のティールト生まれ。ゲント大学出身。2001年、小説『Kras(かき傷)』でデビュー。2009年『警備員』が16ヵ国語に翻訳されEU文学賞を受賞。高い評価を得る。『身内のよんどころない事情により』でオランダ語圏の重要な文学賞、AKO文学賞を受賞
長山さき[ナガヤマサキ]
1963年、神戸生まれ。関西学院大学大学院修士課程修了。文化人類学専攻。87年、オランダ政府奨学生としてライデン大学に留学。以後オランダに暮らし、現在アムステルダム在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
234
読めば読むほどわからなくなる。内側だとおもって読んでいると、いつの間にか外側になったり、でもやっぱり内側だったり。そもそも内とか外とかって捉えかた自体が間違ってるのかもしれない。読んでる最中は愉しくて、それなりに分かってもいたつもりで(途中で数日読まなかったら迷子になって、またさいしょから読み直したけど)でも読み終わったら、はてこれは何だったのだろう、と分からなくなる。全部ホントのようにも、また全部ウソのようにもおもえる。虚構と現実の境界、本の内側と外側、あいまいな間(あわい)。それならば今ぼくのいる⇒2021/08/31
ケイ
113
身内のよんどころない事情により…、このつかみどころのないタイトルより原題の“post mortem“の方が想像しやすい。死後に話すことだとか、死因を追究することだとか、それを頭に入れて読みたかった。自らの不注意もうらめしい。娘への想いが動機なのかな。2022/03/06
ヘラジカ
53
虚構が虚構を見つめる高度で複雑なメタフィクション。ひとつの些細な嘘から分裂し膨張していく領域が、読者である自分の意識すら蝕んでいく。確かにこれは一読では輪郭を明確にすることすら適わない難物だ。訳者による解説を読んで、もう一度頭からすぐに読み直したくなった。難解であるが故にあまり多くの国で翻訳されていないらしいこの作品が、日本で最も有名な海外小説レーベルに加わったのは本当に素晴らしいことだ。読了後ふたたび表紙の絵を見て慄く。なんだかちょっとした旅行を終えた気分かもしれない。2021/08/01
minami
36
身内のよんどころない事情により、という理由をつけて会食を断った作家のステーフマン。その会食は気が進まなく不参加にするための理由を捻り出す。よんどころない、はなかなか使うことはないし意味深長でさらりと受け流せない感じ。この一言で物語は虚構の世界と現実の境界線が曖昧になり、ステーフマンとTが重なったりそれぞれ存在感を強めたりと読みながらむむ、とつい言っていた。まさに装丁のとおり。私のこの理解でいいのか。すると一度で理解できる読者は少ないだろうと訳者あとがきにあった。模倣の意味も見つけられなかった。再読必須か。2025/06/19
Apple
27
とても複雑で迷子になりかけながら読みました.訳者あとがきを読んで,ある程度オリエンテーションがつきました.娘の闘病を描くやけにリアルな第二部,ステーフマンが書く「T」の世界に込められた虚構と真実について,理解はおぼろげながら衝撃を受けました.幼馴染の女性に関する出来事については,あとがきを読んでもいまいちよくわかりませんでした.小説内のステーフマンがTの執筆によって別の世界と行き来する…小説家には世界を渡る力があるかのような錯覚をうけました。再読して、複雑に絡み合う世界観をまた体験したいと思います。2021/12/17