出版社内容情報
マンハッタンを日ごと彷徨する若き精神科医。時折よみがえる遠い国の記憶。数々の賞に輝いたナイジェリア系作家によるデビュー長篇。
内容説明
マンハッタンを彷徨する精神科医。街の風景とざわめきが揺り起こす記憶。街路に刻まれた歴史の痕跡と人々の声―。数々の賞に輝き「ゼーバルトの再来」と讃えられた、ナイジェリア系作家のデビュー長篇。
著者等紹介
コール,テジュ[コール,テジュ] [Cole,Teju]
1975年、アメリカ・ミシガン州生まれ。ナイジェリアで幼少期を過ごし、高校卒業後にアメリカに戻る。ミシガン大学医学部中退後、ロンドン大学とコロンビア大学で美術史を学ぶ。2007年、初の著書となるEvery Day Is for the Thiefをナイジェリアで刊行。2011年、アメリカでのデビュー長篇である『オープン・シティ』でPEN/ヘミングウェイ賞およびローゼンタール賞を受賞、全米批評家協会賞の最終候補に。写真家、美術批評家としても活躍し、ニューヨーク・タイムズ、ニューヨーカー等に精力的に寄稿している
小磯洋光[コイソヒロミツ]
1979年、東京生まれ。翻訳家。イースト・アングリア大学大学院で文芸翻訳を学ぶ。英語圏の文学作品の翻訳のほか、日本文学の日英翻訳にも携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
129
これは小説なのかはたまたドキュメンタリーなのかがよくわからない分野の本だという気がしました。主人公があった人々からその人がたどってきた体験談などのようなものを聞いたりしてそれをこまめに書かれている気がしました。その人物がいた国などについてもよく書かれてて私は嫌いではありません。好きな方の部類の本だと思います。再度読んでみようという気がしました。2018/06/20
藤月はな(灯れ松明の火)
112
ドイツ人の母とナイジェリア人の父との間に生まれたジュリアス。出自のためか、アイデンティティが不安定という理由で与えられた学生時代の屈辱、黒人のように見えるという理由で押し付けられる礼儀への不快感、差別の暴力、独裁者アミンの虐殺から逃れた人々の声、ソ連軍が進軍してきた時の恐怖を抱える母、愛人とのセックスなどが寄せては返すような波のように響く。しかし、そのさざなみも不意打ちのように消えるような自分の罪が被害者から明らかになる。でも彼は謝罪もしなければ、反省もしない。淡々と生きる彼の空虚さを感じて慄くしかない。2017/09/25
優希
91
大きなストーリーはありませんが、静かに胸に染み渡る物語でした。マンハッタンを彷徨いながら、風景、想い、過去が語られていきます。気がつくその中にとゆっくり入り込んでいました。独特の流れは、読者の数だけあるような気がしてなりません。2018/01/22
どんぐり
90
ナイジェリア系アメリカ人作家テジュ・コールのデビュー作。本書の語り手は黄昏時のニューヨークの街を歩くことを愛する精神科医のジュリアス。彼の意識は自分の内と外を飛び回り、時間は自在に形を変え、過去の声に聞き入りながら街をさまよう。ナイジェリア人の父、赤軍に犯された祖母、母親が生まれ落ちたベルリン、ニューヨークで暮らす自分自身の来歴と精神科医としての仕事、ブリュッセルでの祖母探しと黒人青年との出会い、ナイジェリアで過ごした少年時代、1911年にカーネギーホールで行われたマーラー最後のコンサート、人々の記憶から2017/12/02
のぶ
83
今までにあまり読んだことのないタイプの小説だった。主人公は精神科医ジュリアス。両親は、ナイジェリア人の父とドイツ人の母。全編が主人公のモノローグで語られる。語られる内容は、時空を超え、場所を超え、事柄を超える。非常に感想を書き難い小説だが、読んでいると、そこに自分の生きてきた人生や、両親の祖国の歴史が浮かび上がってくる。文章が読み難いわけではないが、自分にとってこの作品の本質を捉えるには時間がかかるのではと感じた。2017/10/18