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出版社内容情報
森の中の宿で。リノベーションされた工場跡地で。音楽フェスの夜に。心をとらえ、運命を動かす瞬間。スイスの人気作家による短篇集。
ペーター・シュタム[ペーター シュタム]
松永 美穂[マツナガ ミホ]
内容説明
湖と丘陵の土地に暮らす人々に訪れる、日常を揺るがす出来事。研ぎ澄まされた文章、巧みな構成、温かな眼差し。世界で愛読されるスイス人作家による10の物語。
著者等紹介
シュタム,ペーター[シュタム,ペーター] [Stamm,Peter]
1963年、ドイツと国境を接する湖畔の町、シェルツィンゲンに生まれる。中等教育のあと会計の仕事に就くが、のちにチューリヒ大学で英文学、心理学などを学ぶ。ニューヨーク、パリ、北欧などで暮らしたあと、チューリヒでジャーナリストとなり、1995年から小説を発表し始める。数多くの長篇小説、短篇小説のほか、ラジオドラマの脚本や文芸誌の編集にも携わる。ラウリーザー文学賞、ラインガウ文学賞、ヘルダーリン賞ほか、受賞多数。英語版の短篇集We’re Flyingはフランク・オコナー国際短篇賞の最終候補作となり、作品はこれまでに30以上の言語に翻訳されている
松永美穂[マツナガミホ]
早稲田大学教授。訳書にベルンハルト・シュリンク『朗読者』(毎日出版文化賞特別賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆりあす62
69
図書館本。★★★☆☆スイス人作家、10の話からなる短篇集。「スウィート・ドリームズ」は村上春樹氏が「甘い夢を」として翻訳し、『恋しくて』に納めているという。個人的には、表題の「誰もいないホテルで」と「氷の月」と「眠り聖人の祝日」と「自然の成りゆき」・・・とにかく、どれも日常生活にスパイスをきかせた心にひっかかる物語ばかりなのだが、どこか不安定な最後が心から離れないのかな。2017/03/09
NAO
68
10の短編のほとんどが、スイスのボーデン湖に接する地方を舞台としている。その地に住む者、その地にやってきた者。彼らは、楽しいことなどないかのように、どこか諦めたような眼差しをしている。いつもと変わらない日々なのに、それは、不穏さを感じさせる。そして、不意に、奇妙な出来事が、それまでの暮らしを一変させる。救いのない話は、満たされない思いと、読んでいく端から壊れていきそうな脆さの中で危うく成り立っている。スイスという美しくも孤立した土地が、その危うさをいっそう引きたてている。2021/11/28
キムチ
49
心のバケツに空きがないと読めない作品ばかり~短編集なのに。自然に対峙する人間はちっぽけ。淡々と生まれて粛々と土に帰っていく。その営みを懊悩の画面にしつらえて、読み手は曇りガラスの向こうに遠景として読んでいる印象。時には自己中心、或は閉塞的視野に陥っているヒーローヒロインを見出すも、現実に立ち戻ってみると、自分だってさもあらんかな・・と。エピソードに必然がなく、え・・って余韻を手探るラストが多かった。最後の・・のピアノ教師の痛さとスーツケースが印象に残る・・人生の終焉、妻に背を向けて心は何処へ?2017/04/06
翔亀
49
「アーニャはいつも、誰かに近づこうとしていた。…それはいつも、けっして到達できないと確信しつつ、人間に向かって逃避するようなものだった」「彼女は自分を解放しようとするが、その試みによって目に見えない枷はさらにきつくなるばかり」(p56)。スイスの独語系作家が紡ぐ短編はどれも美しい爽やかさの中に、やるせなさを秘めている。このやるせなさから解放されたのは、『森にて』のアーニャの場合は、三年間の森の中での暮らし(野宿!)だった。森で動物のように「現存、いつも意識を目覚めさせていること」(p70)を学ぶ。↓2016/11/19
藤月はな(灯れ松明の火)
46
表題作は彼女は一体、なんだったのだろう?「自然の成り行き」は子供を作らない夫婦が恐れに遭遇することで恐れを断ち切るように恐れを生み出す均衡性が見事だ。「主の食卓」は神の愛を人々に説いても報われない牧師。そんな牧師のとった不遜に見える突拍子もない行動は誰よりも神からの祝福を感じていたのだろう。「森にて」は全ての繋がりを切った女が待ちわびていた狩人は『アンチクライスト』で「彼女」が待ちわびていた三貧者と同じものだったのだと思う。「氷の月」の男女関係の孤独やそれでも人を求めずにはいられない切実さに切なくなる2016/09/09
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