出版社内容情報
彼は戦地で彼女は故郷で、別離の悲しみ、初めて結ばれた夏の記憶、戦場の経験を綴る、時空を超えて。ロシア・ブッカー賞作家の長編。
内容説明
ワロージャは戦地へ赴き、恋人のサーシャは故郷に残る。手紙には、別離の悲しみ、初めて結ばれた夏の思い出、子供時代の記憶や家族のことが綴られる。だが、二人はそれぞれ別の時代を生きているのだ。サーシャは現代のモスクワに住み、ワロージャは1900年の中国でロシア兵として義和団事件の鎮圧に参加している。そして彼の戦死の知らせを受け取った後もなお、時代も場所も超えた二人の文通は続く。サーシャは失恋や結婚や流産、母の死など様々な困難を乗り越えて長い人生を歩み、ワロージャは戦場での苛酷な体験や少年の日の思い出やサーシャへの変わらぬ愛を綴る、二人が再び出会う日まで。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
133
ロシアの時間と空間を越えた書簡小説です。非常に私には面白く読むことができました。二人の感情がどのようになっているのか、ある意味SF的な感覚も受けます。実験小説的な意味合いがあるのでしょうか?どこかで読んだような感じの記憶がありました。再度読んでもいいと思っています。2018/03/08
遥かなる想い
127
現代のロシアと 百年前の戦場にいる彼との時空を超えた文通の物語である。別の時代に生きるワロージャと恋人サーシャの手紙… 決して交わることのないこの書簡は 本当に出されたものなのだろうか? ひどく 不可思議な交流が時代を超えて、 続く。どこかに違和感を感じながら、結局解消されることなく終わってしまった、そんな作品だった。2020/11/20
syaori
73
物語は恋人たちの往復書簡の形で進みます。徐々に明らかになるのは二人の間の時代と時間の奇妙なずれ。ワロージャが義和団の鎮圧に向かう間、サーシャは現代で結婚や離婚を経験するというように。多分、世界にはたくさんのサーシャとワロージャがいるのだと思います。子供は親に反抗し結婚し子を産み戦争は起き、「終わりなき生の営み」は繰り返される。私達と同じように二人にも人生や運命の意味は開示されませんが、しかし死や生やそれを取り巻く他愛のないことについて語る手紙から「生きるってどういうことなのか」の一端を見たように思います。2023/01/10
aika
45
手紙は、きっと届く。読んでくれる人がいるから、僕は、私は、手紙の中で生きられる。義和団事件制圧のために中国に派兵された青年ワロージャと、その100年後の現代を生きる女性サーシャ。決して出会うはずのないふたりが時空を超え、文通で結ばれていく。ワロージャの手紙には、人々の命が無惨に砕け散っていく戦地での壮絶な体験が綴られます。一方のサーシャも、両親との関係や恋愛に悩み続ける複雑な生活をワロージャへの手紙にさらけだしていきます。逃げ出したいほどの各々の過酷な日々を、手紙が滲ませた希望を糧に、どうか生きてほしい。2020/11/22
りえこ
35
手紙が好きなので読みました。手紙だけど、手紙とは違うなぁ。家族の事って、やはりとても重要で避けられない事柄で、読むのがきつい部分もたくさんありました。その時は気付かないけど、子供の頃って、素晴らしく幸せな時間だったんだなと思った。2014/05/13