内容説明
セルゲイ・ブーニンは孤独だった。22歳で結婚に破れて以来、どの恋にも空しさと悲哀がつきまとう。ソ連崩壊後、政治の世界に足を踏み入れ、遂に大統領にまで昇りつめたが、真の愛は手に入らない。だが、政敵との闘いの日々、移植手術を受けた彼の心臓の「持ち主」と名のる謎の女性が現れると、運命は過去と交錯し、大きく動き始める。
著者等紹介
クルコフ,アンドレイ[クルコフ,アンドレイ][Курков,Андрей]
ウクライナのロシア語作家。1961年レニングラード(現サンクトペテルブルク)に生まれ、3歳のとき家族でキエフに移る。キエフ外国語大学卒業。出版社勤務、オデッサでの兵役を経て、小説、シナリオ、児童書を書いていたが、長らく日の目を見なかった。クルコフの名を一躍有名にしたのは、1996年に発表した『ペンギンの憂鬱』である。約20カ国語に翻訳され、国際的なベストセラーとなった。キエフ在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
139
ウクライナ大統領になってしまった男 セルゲイ・ブーニンの恋の物語である。 三つの時代の出来事が交互に語れるが、 セルゲイの憎めないキャラが 楽しい。 いい加減な男 セルゲイと ある時期を 共にする女性たち…ウクライナとロシアの 微妙な関係も 描きながら、大統領の孤独を 描いている…そんな作品だった。2019/09/16
ケイ
136
タイトルから想像される甘さは見つからない。不穏さが覆っていても、どんよりせずに時折失笑するのは「ペンギンの憂鬱」と同じ。若い時、中年期、壮年期の3つの軸で話は進む。壮年期は作品発表時より先の時代を語っていてSFチックでもある。ウクライナの不安定な情勢~ロシアとのやりとり、タタール人にチェチェン人、クリミア半島問題、電気の問題等々。Wow…。子供は産まれてこず、心臓はもはや誰のものか。しかし、大統領に幸せな未来を祈らずにはおられない。詳細読みるにはクリミア問題についての知識がいるが、なくても十分楽しい。2020/03/15
榊原 香織
88
”ペンギンの憂鬱”の著者。 ウクライナの大統領の、現在、若い頃、大統領になる前、と3時系列同時進行で描く、という実験的な小説。 まあ当たり前なんだけど、若い頃は普通の男の子。 ハルヴァが出てきた!やっぱり子供に人気のお菓子らしい。 630pちょっとあるので、長かった。2021/02/21
のりすけたろう
31
ペンギンの憂鬱が面白かったので、こちらも読んでみました(*´꒳`*)✨なかなかの長編で、私的にはペンギンの憂鬱より面白い!と思いました。3つの時代が順番に語られるんだけど、気になって先へ先へと読んでしまい、結構あっという間に読み終わっちゃいました⭐️所々に寒中水泳が出てくるので、布団に潜り込みながら読みました。他の作品も翻訳されないかなーと期待しちゃう作家だなと思います。2021/01/17
DEE
17
いくつもの悲しい別れを経てウクライナ大統領となったブーニンの半生の物語。 すごく長いので合間読みとはいえ一週間かかった。でも静かな語り口が心地よく、毎日ページを開くのが楽しみだった。ウクライナの自然と街並みが目の前に浮かんでくる。 人は信用できないし、国はいくつも問題を抱えているし、人生は思い通りにならない。でもようやく安心できる愛を手に入れて、ブーニンの人生に初めて鮮やかな色が塗られたようだ。政治的な含みも感じるけど、特に意識しなくても物語として充分に面白かった。厚くて持ちにくいのは難点だったけど…2020/05/18